#SHIFT

ボーナスは“特権”か 「低賃金で何が悪い?」正当化され続ける非正規格差河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(4/4 ページ)

» 2020年10月23日 07時00分 公開
[河合薫ITmedia]
前のページへ 1|2|3|4       

非正規雇用の在り方とは?

 厄介なのは、低賃金問題に「女性」という属性がつくと、いつの間にかシングルマザー問題にすり替わってしまうこと。確かに、シングルマザーの貧困問題は深刻です。非正規で働くシングルマザーは多いです。しかし、問題の根っこは、「非正規=低賃金」を容認し続けていることにあって、シングルマザーに問題があるわけじゃない。……当たり前です。

 とにもかくにも、非正規が「低賃金」「不安定」なのは臨時工時代から続いていて、同一労働同一賃金が法律に明記されても、「均衡」という2文字がある限り、差別はなくなりません(関連記事:賃金は減り、リストラが加速…… ミドル社員を脅かす「同一労働同一賃金」の新時代)。

 差別をなくすには、「非正規雇用は原則禁止」にするしかないのです。

 例えば欧州では、有期雇用にできる場合の制約を詳細に決めていて、期間も限られています。日本のように、非正規で何年も雇い続けることができない上に、非正規は「企業が必要な時だけ雇用できる」というメリットを企業に与えているとの認識から、非正規雇用には不安定雇用手当があり、正社員より1割程度高い賃金を支払うのが“常識”です。

 二言目には「世界は、世界は〜〜」というのですから、「人」を大切にする世界の流れも、その「世界は〜」に入れなくてどうするというのか。非正規雇用問題は、その在り方から議論し、性差別から続いている「差別」のない、誰もが「働く喜び」を享受できる社会になってほしいものです。

河合薫氏のプロフィール:

photo

 東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。その後、東京大学大学院医学系研究科に進学し、現在に至る。

 研究テーマは「人の働き方は環境がつくる」。フィールドワークとして600人超のビジネスマンをインタビュー。著書に『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアシリーズ)など。近著は『残念な職場 53の研究が明かすヤバい真実』(PHP新書)、『面倒くさい女たち』(中公新書ラクレ)、『他人の足を引っぱる男たち』(日経プレミアシリーズ)、『定年後からの孤独入門』(SB新書)


お知らせ

新刊『コロナショックと昭和おじさん社会』(日経プレミアシリーズ)が発売になりました!

 失業、貧困、孤立――。新型コロナウイルスによって社会に出てきた問題は、日本社会にあった“ひずみ”が噴出したにすぎません。

 この国の社会のベースは1970年代のまま。40年間で「家族のカタチ」「雇用のカタチ」「人口構成のカタチ」は大きく変化しているのに、それを無視した「昭和おじさん社会」が続いていることが、ひずみを生み続けています。

 コロナ禍を経て、昭和モデルで動いてきた社会はどうなってしまうのか――。

 「日経ビジネス電子版」の長期連載を大幅に加筆し、新書化しました。

前のページへ 1|2|3|4       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.