「言いたいことを全部吐き出せる」 “AI面接官”が学生に支持される理由 アキタフーズの事例二次面接(対人)が有意義になる(1/2 ページ)

» 2020年10月30日 07時00分 公開
[人事実務]

人事月刊誌『人事実務』〜これからの働き方とキャリア形成〜

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 『人事実務』誌は、産労総合研究所(創立1938年)が発行する人事専門情報誌です。

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【『人事実務』の特徴】

・先進企業の取り組みを毎号3〜5事例掲載

・本誌でしか読めない独自調査を掲載

               

 本記事は『人事実務』(2020年9月号)連載「企業の採用最前線」より「第36回 アキタフーズ」(取材・文 小林信一)を一部抜粋、要約して掲載したものです。

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卵の専門会社から食品総合メーカーへ

 アキタフーズは1927年創業の老舗企業だ。種鶏・孵化業からスタートして、時代に合わせて最新の生産技術を海外からも積極的に取り入れ、いまでは卵の生産に関する全ての工程を自社で担う国内唯一の「完全直営一貫生産システム」を持つ。

 同社の求める人材はバイタリティー、柔軟性、感受性を高いレベルで持ち合わせている人。半世紀にわたり真摯に卵だけを作り続けてきた同社だが、食品総合メーカーを目指し、現在工場を建設するなど準備を進めている。その一方で鶏糞を肥料としてベトナムに輸出するなど、国際化にも積極的だ。そこで、何事も諦めることなく進められるバイタリティー、状況に応じて臨機応変に対応できる柔軟性、相手の立場に立って考えられる感受性の3つが特に必要とされているのだという。

母集団を大きくしたい

 さて、そんな同社は一昨年から学生とAIとで面接をする、対話型AI面接サービスを導入した。まずはその理由や背景から説明しよう。

 「大きな理由は母集団を増やしたい、ということでした」と説明するのは人事部兼総務部次長の齊藤和毅氏。

 同社は本社のある広島のほか、東京、大阪の3カ所を拠点として採用活動を行ってきた。しかし、それだと遠方に住む学生は会社説明会や面接に参加しづらい。加えて採用難といわれる現在である。同社の母集団は徐々に小さくなっていった。

 さらに、AI面接を導入したもう一つの理由として、生産現場の責任者である農場長が一次面接から参加していたことがあげられる。農場長が長時間面接に携わることは難しく、毎年スケジュール調整が困難だったという。

 何かいい方法はないかと考えていたとき、AI面接の開発を進めていたタレントアンドアセスメントから提案を受けた。

 「面接で話した内容が文字起こしされ、評価項目については点数として出てくる。われわれがその場に立ち会う必要がない、という点も魅力でした」

 学生はスマートフォンさえあれば、いつでも、どこでも面接を受けることができる。そのため、全国からの応募が期待できた。母集団形成にもプラスに働くと考えたのだという。

24時間365日面接が受けられる

photo AI面接評価レポート(サンプルから一部抜粋)

 では、どのように面接が行われるかである。

 学生は、Webの会社説明会に参加した後、履歴書を提出する。その後、タレントアンドアセスメントのアプリ「SHaiN」を自分のスマートフォンにインストールする。URLが届き次第ログインし、約10日の期間内であればいつでも面接をすることができる。対面の面接だと会場を設定したり、面接官や学生のスケジュールを調整しなくてはならないが、そういった手間がないのがAI面接だ。

 質問は「学生時代に取り組んだことは?」といった対面の面接でもよく聞かれるものが用意されているほか、オプションで付け加えることもできる。ちなみにアキタフーズでは、志望動機は対面で聞きたいと考え、あえてAI面接の質問には入れていないという。

 AI面接では、学生の答えが浅い、不十分と判断したらAIが「もっと詳しく」など、掘り下げる質問をしてくれる。そのため、面接時間は学生によって違い、短くて40分程度、長くて1時間半にもなるのだとか。

 もっとも、AIだと気兼ねなく話せるからか、ついつい話が長くなる学生もいるようだ。

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