2016年に電力が自由化され、一般消費者にとっても選択肢が広がることとなった。ENECHANGEの設立は2015年。家庭や法人に向けて電力やガス契約のマッチングサービスを提供するエネルギープラットフォーム事業、また、電力ビッグデータを活用したマーケティングなどのエネルギーデータ事業を手掛けるエネルギーベンチャー企業である。
掲げるミッションは「エネルギーの未来をつくる」。そして、その実現のためのバリューとして「ImpactDriven-インパクトがあることをやる」「GoAgile-まず実行し、結果から学ぶ」「BeOpen-オープンであれ」の3つを持っている。
この3つのバリューについて代表取締役COOの有田一平さんは、「エネルギーで世界にインパクトを与えること。また、ベンチャー企業なので素早く実行して失敗から学ぶこと。そして、プラットフォーマーとして社外に対しても社内に対しても情報開示を行い、中立・公平であること。この3点を重視しています」と説明する。約100人の社員の約半数はエンジニアだが、採用も、この3つのバリューに共感できることを基準としている。
オープンであること、透明性を持つために、さまざまなコミュニケーション施策を行ってきた。現在はリモートワークの拡大に伴い中止しているものも含め、いくつかみてみよう。
「代表ごはん」は、代表取締役CEOの城口さん、COOの有田さんのそれぞれが社員と食事をしながら普段じっくり話せないことを話し合う機会にするもの。「ハッピーフライデー」は、月に2回程度開催される部署間の交流を活発にするための懇親会。他には、全社員参加の、事業報告やバリューを体現した人を表彰する「スプリントクローズ」(2週間ごとの全社集会)などがある。
食事を軸に集まる施策は、新型コロナウイルス感染予防の観点から実施を見合わせているが、今後も様子をみて在り方を検討していくという。
コロナ禍への対応も迅速だった。「新型コロナウイルス感染症の危機感が高まった2月に、代表直轄の対策チームが立ち上がりました。代表直下のCEO室とCOO室のメンバーが中心です」。この対策チームで週1のミーティングを繰り返し、方針の検討や社内への通知を行っていった。また、非接触型体温計や消毒液を設置したり、手洗いうがいの励行、感染予防知識の周知も進め、3月25日の東京都の緊急会見を受けて、3月26日から原則フルリモートへの切替えを行った。
さらに5月11日には「ウィズコロナ時代の新しい働き方改革宣言」を発表した。
その具体的な内容は、(1)テレワーク制度の恒久化、(2)オフィススペースの縮減、(3)ハンコ文化を取りやめ電子契約へ移行、(4)コミュニケーション手当など出社を楽しくする工夫、からなる。
有田さんは、「感染症対策としてテレワークを開始してみたら予想以上にパフォーマンスが上がったというのが一番の理由ですね。社員の反応もよく、会社として自由な働き方を可能にした方が満足度も生産性も上がるだろうと考えました」と宣言の意図を説明する。
社内調査でも、テレワークの導入を評価する声が9割と満足度は高い。会社からも4月にはテレワーク準備手当として2万円を支給しており、在宅勤務の環境が整ってからは、満足度はさらに上がっているという。ちなみに、準備手当の主な使い道は、イス、机、クッションなどが多かったそうだ。
東京都の緊急事態宣言が明けた7月1日からは、週1〜2日の出勤とテレワークを組み合わせた働き方、ハイブリッド勤務制度を本格導入した。いまのところ、部署またはチームごとに出勤日を設定する運用を行っている。また、通勤手当を廃止するとともに、全従業員に対し月5000円のテレワーク手当を支給する。
「当社の調査によると、在宅勤務が進んだ4〜5月の電力消費は、全体でみれば落ち込んでいますが家庭の消費量は上がっています。さらに勤務時間帯にあたる午前9〜午後6時では平均電気使用量が94%も増加しています。テレワーク手当にはこの負担を補填するという意味もあります」
オフィススペースも、7月時点で既に40%分の縮減を完了させている。これに伴い、固定席を廃止し、複数人で机を交代で使うシェアアドレス制も導入した。
ただ削減するだけでなく、浮いた賃料を使い新しい働き方に応じた環境整備も行った。セミナーや記者発表に使われていた、最大で100人が入れる大人数用セミナールームを改装し、会議室やオンライン会議に対応した小会議室を複数設けた。全ての会議室には配信用の機材を整えた。
テレワークを続けてきて、有田さんは生産性に大きなマイナスはないと判断している。
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