2019年で20周年を迎えたスープストックトーキョー。外食店舗のほか、冷凍スープ専門店舗の「家で食べるスープストックトーキョー」や「おだし東京」(品川駅構内)、カレー居酒屋「YELLOW」(大阪)など60店舗以上を展開している。冷凍で日持ちがする通販もギフトとしても人気だ。掲げる理念は「世の中の体温をあげる」。スープのイメージが伝わるとともに、働くスタッフにとっても、理念として日常の業務のなかに浸透している。
このスープストックトーキョーのユニークな制度の一つが「バーチャル社員証」だ。これは、同社で働いたことがあるスタッフが退職する際に発行される、同窓生の会員証のようなものだ。
同社で働く人は、同社のスープが好きだという人が多く、また「世の中の体温をあげる」という理念にも共感している。そうした人たちが退職しても、同社とつながりを持つための仕組みとして導入された。
店舗で働いているのは、約7割が学生アルバイトだ。つまり大学卒業と同時に辞めて、別の企業に就職するわけだが、社会人になっても店長と個人的につながっているケースが多くあった。店長や仲間がいるからと店に行くのはもちろん、退職してもなお近況報告をするために店舗を訪れる元アルバイトもいるという。
「ただ、あくまでも個人的なつながりなので、店長が代わってしまうと、そのつながりが途絶えてしまいます。そもそも当社の店舗で働いてくれていた人たちは、スープストックトーキョーを応援してくれる人たちでもあります。個人のつながりがなくなったからといって、ブランドともつながれなくなるのはお互いにもったいない。そこで、バーチャル社員証を作って、個人的だったつながりを、組織的にしていこうと考えました」と、村上彰悟氏(人材開発部 部長)はバーチャル社員制度ができた背景を説明する。
制度は2016年春からスタートし、現在のバーチャル社員数は2000人を超えている。実際に稼働しているアルバイトは1200人なので、バーチャル社員のほうが多くなっている計算だ。
バーチャル社員は希望制である。流れとしては、まず、各店舗で春に卒業予定の学生アルバイトにヒアリングし、バーチャル社員の登録をしてよいかどうかを確認したうえで一括登録する。村上氏によると、登録率はほぼ100%だという。
夏に就職する人の場合は、社内のSNS機能がついたコミュニティーサイト「Smash」上にある登録フォームを案内し、自身で登録してもらう。いずれの場合でも、登録後にバーチャル社員証が、副社長の江澤身和氏の手紙とともに郵送されてくる。ちなみに、リアルにおける社員証ももちろんあり、社員は一律同じデザインだが、アルバイトは店舗によりデザインが異なる。
勤務年数など、バーチャル社員となるための制限はない。対象者のほとんどは学生であるものの、フリーターや主婦でも、同社で働いた経験があればOKだ。
「近年はアルムナイの記事として掲載される機会も増えています。その記事を読んで『昔働いていたのですが、どうすればバーチャル社員になれますか?』という問い合わせもあります」と村上氏は反響がある様子を語る。社員として働いた後に転職し、その後バーチャル社員として登録していた人が、8年ぶりに正社員として戻ってきた例もある。
【編集履歴:2020年8月15日23時46分更新 ※初出時(図表)の内容に誤字があったため、修正しました。】
バーチャル社員になると、6つの特典が与えられる(図表)。働いているときと同様に、店舗では10%の割引を利用できるほか、ファミリーセールや試食会などの案内を受け取れる。毎月1回の割合で配信されるメールマガジンからそうした情報を得られるのである。村上氏はバーチャル社員の意義をこう話す。
「過去に働いていた人はスープの味もよく知っているため、新商品のお披露目会などに呼んで、試食会に参加してもらっています。彼らの意見を聞いて商品に反映させることもあります。離職してもつながりを構築していくことで、変わらずスープストックトーキョーを盛り上げてくれる仲間としてかかわり続けています」
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