新型コロナウイルスの感染拡大を踏まえ、業務の進め方を見直す企業が増えている。営業、在宅勤務、出張の是非、新たなITツール活用――先進的な取り組みや試行錯誤をしている企業の事例から、仕事のミライを考えていく。
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2021年3月卒業予定の学生に対する企業の採用選考が6月1日、解禁された。3月1日には説明会などの広報活動が解禁されているが、この3カ月の間に、学生の企業選びの基準が大きく変化している。もちろん、変化しているのは企業選びの基準だけではない。選考の方法そのものも様変わりしたのだ。
採用直結型インターンの先駆者ともいえるワークスヒューマンインテリジェンス(旧・ワークスアプリケーションズ)は、内定者に向けてオンラインでのインターンシップを実施。他にも、静岡銀行が5月29日、21年卒向けの学生4〜6人の集団面接で実施する1次選考をオンラインで始めるなど、オンライン化の流れは首都圏だけにとどまらない。
現在3年生の22年卒向けの採用も、既にフジテレビがアナウンス部門のインターンシップをオンラインで実施していて、もはや「大企業がオフライン」「ベンチャーがオンライン」という区分けでもない。
リクルートキャリアによれば、緊急事態宣言下で、「Web上での面接を受けた」とする学生は45%、「Webでの説明会やセミナーに参加した」と答えた学生は24.6%(20年5月1〜15日までに実施した活動。複数回答可)と、着実に採用選考のオンライン化が進んでいるのだ。
とはいえ、緊急事態宣言発令前の3月末時点でのオンライン面接導入済企業は18.0%(リクルートキャリア調べ)。各社、「慌ててオンライン化への対応を進めている」というのが実情ではないだろうか。
筆者は09年以降、『マスコミ就活革命〜普通の僕らの負けない就活術〜』(早稲田経営出版)など3冊の就活本を執筆し、この10年間、学生への就活指導を対面で続けてきた。4〜5月のステイホーム期間中は、70人以上の学生とオンライン上で面談をし、オンライン面接指導をするとともに、彼らの声に耳を傾けてきた。
本記事では、そこで知り得た、オンライン化による学生の価値観の変化と、今後の就活市場に起こりそうなこと、また、オンライン面接で判断しやすくなるもの・判断しにくくなるものについてレポートする。
まず起こり得る変化は、優秀な学生への「内定の一極集中」だ。面接のオンライン化が進むことによって、当然のことながら、物理的な移動の負担がなくなった。学生の側は、今まで移動に時間と金銭的な負担を感じ、受けていなかった企業も受けることができるようになる。そうすると、優秀な学生が多くの企業の内定を、距離の制限なくとることができるのだ。
以前から、採用数の少ない地方テレビ局のアナウンサー試験では、首都圏の学生が受験のために全国の局をまわり続け、その負担に疲れた学生から受験を諦めていくという現象が起きていた。だが、その負担が一気にゼロになったのだ。既に実施されている21年卒の選考では、優秀な学生が簡単に全国の局を受けられる、という事態になっている。
地方の企業側は、これまでは「実際に遠方まで試験を受けに来るかどうか」で、本気度を計ることができたが、それもままならない。企業側は以前にも増して、内定辞退のリスクを考えて採用をしなければいけないことになる。とはいえ、地方企業にとっては「これまで出会うことのなかった優秀な学生と出会う機会が増えた」と捉えることもできる。
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