「70歳まで会社にしがみつく人」が結局、会社を弱体化させてしまうワケスピン経済の歩き方(3/6 ページ)

» 2020年11月10日 09時17分 公開
[窪田順生ITmedia]

70歳まで会社にしがみつくおじさん

 先ほどの元管理職の男性のように、若手がやるような仕事を振ったらむくれるかもしれない。ジョブ型雇用に切り替えたら切り替えたで、能力をシビアに評価したり、独立を促すようなことを言ったりしたら逆ギレするかもしれない。それだけならばまだマシで最悪、「長年尽くしてきた会社に裏切られてパワハラを受けた」なんて人事トラブルに発展するかもしれないのだ。

 考えすぎだとあきれる方も多いかもしれないが、一般社会では、「暴走老人」「キレる老人」などの言葉に象徴されるシニアトラブルは多発している。老化による脳の萎縮で“怒り”という感情を抑えるブレーキが利きにくくなることは医学的にも分かっているのだ。

リモートワークについていけないおじさんも(出典:ゲッティイメージズ)

 そこで、想像していただきたい。ヘタすれば自分の祖父ほど歳の離れた60〜70代のおじいちゃんたちの機嫌を取らなくてはいけないような職場で、若い世代の社員たちはモチベーションを維持できるだろうか。中には、「オレもあと40年ガマンすれば、この人たちのようにでかい顔ができる」と考えて、じっと堪えるサラリーマンの鏡のような人もいるかもしれないが、能力のある人材であればあるほど「バカバカしい」と思うのではないか。

 中には、その失望が広がれば、「優秀な人材の日本企業離れ」を促進するかもしれない。多くの外資系企業は、結果を出さなければ解雇もあり得るような不安定な環境だが、シニア人材をヨイショして機嫌良く働いてもらうなどの気苦労がないぶん、まだこちらのほうがマシだと考える若者が増えていくのだ。

 「70歳まで会社にしがみつくおじさん」がこれまでの役職や賃金をキープしようとバリバリ働けば働くほど、若い世代の賃金とモチベーションは下がって、会社にイノベーションをもたらすような有能な人材が流出して競争力を低下させるという「負のスパイラル」に陥ってしまう恐れがあるのだ。

 それがうかがえるのが、日本企業の平均年齢だ。昭和に入ってから企業の定年は55歳が一般的だったが、1980年代に60歳に引き上げられ、今や65歳まできた。当然、企業も年々高齢化している。東京商工リサーチによれば、20年3月期決算の上場企業1792社の従業員の平均年齢(中央値)は41.4歳と過去最高齢になった。

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