「70歳まで会社にしがみつく人」が結局、会社を弱体化させてしまうワケスピン経済の歩き方(4/6 ページ)

» 2020年11月10日 09時17分 公開
[窪田順生ITmedia]

組織の中に潜む「老害」

 では、ベテラン社員が増えたことで、日本企業の競争力が高まったかというと残念ながらそんなことはない。ベテランが活躍するのは、「下町ロケット」的なフィクションの世界だけで、現実は経験値のあるベテランの割合が増えれば増えるほど日本企業の競争力は落ちている。世界の時価総額ランキングで、かつては上位に食い込んでいた日本企業は高齢化とともに続々と脱落し、50位圏内に残っているのはトヨタ自動車のみだ。

 どんな企業が競争力が高いのかというと、「若い従業員の多い会社」である。GAFAなどシリコンバレーのテック企業などは、従業員の平均年齢は30代で、日本の上場企業より10歳若い。

 断っておくが、「シニア人材は使い物にならない」などとディスっているわけではない。企業でキャリアを重ねた後に独立し、活躍されているシニアは世の中にたくさんいらっしゃる。蓄積した知識や経験で、自分の人生を切り拓くという点で、シニア人材は若者に比べて遥かに優秀なのだ。しかし、その能力を「組織にしがみつく」方向へ用いると途端におかしなことになる。つまり、「社員がシニアになるまでしがみつくというマインドが強いような組織は成長ができない」と言っているだけだ。

 ちょっと考えれば当然のことだが、定年まで会社にしがみつく人は、最終的なゴールは無事にその日を迎えることなので、どうしてもリスクを取れない。社内政治では長いものに巻かれるし、身を切るような改革はどうにかして避ける傾向が強い。批判をしているわけではなく、人間というのはどうしても組織に長くしがみつくと、既得権益を享受することがやめられなくなって、後進の若い世代にとってマイナスの存在になってしまうということが言いたいだけである。

 この現象を、日本では古くから「老害」という言葉で戒めてきた。そして、組織の「病」をどうにか克服しようと長い戦いを続けてきた。どれくらい古くからというと例えば今、記録的な大ヒットをしているアニメ「鬼滅の刃」の舞台である大正時代からだ。

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