「我慢の3連休」だったのに、なぜ人は「経済」を優先したのかスピン経済の歩き方(3/5 ページ)

» 2020年11月24日 09時40分 公開
[窪田順生ITmedia]

生きていくうえで何が必要なのか

 もしGo To キャンペーンが何かしらの見直しをされれば、収入が減ってしまう人も多いだろう。また、今年前半のような営業自粛が要請されたら廃業に追い込まれる事業者も出てくるだろう。そうなれば、失業者も増えるので自殺者も増えていく恐れがある。このような「経済死」が増えることが、社会にとっては非常に深刻なダメージをもたらすことは言うまでもない。

 「我慢」をして自宅に引きこもっていれば、確かに重症化リスクの高い高齢者などに感染を広げることはないので、救われる命がある。しかし、「我慢」をしないで外に出て、買い物や食事を楽しむことでも、救われる命がたくさんあることを、この半年間で多くの人が痛感しているのだ。

 それが「新型コロナ感染者急増」の最中でも、経済活動を控えない人がこれだけ世の中に溢れかえっている理由ではないのか。

 というと、「命よりも経済を優先するのか!」とか「そういう無責任な考え方が感染拡大を招いて、医療従事者を苦しめるのだ」と憤る方も多いかもしれないが、これは別に命と経済を天秤にかけてどっちを選べばいいのかというような類の話ではなく、人が生きていくうえで何が必要なのかという話である。

 夢や目標を追い求めるのが生き甲斐だという人もいれば、家族や大切な人を守ることに命をかけている人もいる。もちろん、そのためにも、健康で病気にならないようにしなくてはいけないわけだが、それはあくまで手段であって、生きる目的にはならない。

新型コロナ感染者数(11月23日現在、出典:厚生労働省)

 人間というのは「病気にならない」ために生きているわけではないのだ。もちろん、感染症の場合、拡大を抑えることは社会全体で取り組まなくてはいけないが、死者がどれだけ出るのかなどのリスクを考慮して、社会活動とのバランスをとってきた。

 実際、これまでわれわれの社会はそうやってきた。例えば11月23日、新型コロナの国内死者数は2000人になったとニュースになっていたが、2019年の人口動態統計月報年計(確定値)によれば、昨年1年間でインフルエンザで亡くなった人は3575人である。

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