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上から目線? 経団連が発表した「教育界への提言」が、経済界へのブーメランなワケ隗より始めよ(4/4 ページ)

» 2020年12月04日 05時00分 公開
[川上敬太郎ITmedia]
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出所:経団連「2018年度 新卒採用に関するアンケート調査結果」

 同資料には、18年調査における「選考にあたって特に重視した点」のグラフも公開されており、82.4%と、実に8割以上の企業が「コミュニケーション能力」を重視していることが分かります。

 次点は「主体性」で64.3%。「主体性」は、今回の提言でもSTEAM教育などによって育むべき要素として取り上げられていました。しかしながら、「課題解決能力」が19.8%、「リーダーシップ」17.1%、「専門性」12.0%、「創造性」11.1%など、今回の提言にあるような育成ポイントと関連する項目は軒並み低い数値です。グローバルな視野やダイバーシティ&インクルージョンに至っては、そもそも該当する項目自体が見当たりません。

 これが、提言に覚えた違和感の正体ではないでしょうか。

提言は「ブーメラン」、経団連も変わるべき

 経団連が提言を通して教育界に求めた改革とは、そのままブーメランのように返ってくる、経済界自身にも求められる改革でもあるといえるのではないでしょうか。もし教育界が今回の提言を全面的に受け入れて改革し、Society 5.0で活躍できる人材の育成が実現されたとき、果たして経済界はきちんとその能力を評価して受け入れられるのでしょうか。

画像はイメージです(出所:ゲッティイメージズ)

 早くからキャリア教育を受けて職業観を身に着け、STEAM教育で学際的に創造性などさまざまな能力を磨き、高い情報リテラシーを備え、ダイバーシティ&インクルージョンの観点に立って、グローバルにリーダーシップを発揮できる人材――仮にそんな「理想的人材5.0」が育成できたとしても、「2018年度 新卒採用に関するアンケート調査結果」を見る限りは宝の持ち腐れになってしまわないか心配です。

 つまるところ、教育界に向けられた提言は、教育界だけに限られた課題ではなく、日本社会全体にとっての課題なのではないかと思います。そして、その課題解決のためには教育界と同様に、日本中の企業からなる経済界の改革もまた、不可欠であるはずです。

著者プロフィール・川上敬太郎(かわかみけいたろう)

1973年三重県津市生まれ。愛知大学文学部卒業。テンプスタッフ株式会社(当時)、業界専門誌『月刊人材ビジネス』などを経て2010年株式会社ビースタイル入社 。2011年より現職 (2020年からビースタイル ホールディングス) 。複数社に渡って、事業現場から管理部門までを統括。しゅふJOB総研では、のべ3万人以上の“働く主婦層”の声を調査・分析。 『ヒトラボ』『人材サービスの公益的発展を考える会』主宰。NHK『あさイチ』など、メディア出演・コメント多数。 厚生労働省委託事業検討会委員等も務める。 男女の双子を含む4児の父。


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