提言の通り、これら5つの教育を通して育成された人材であれば、Society 5.0においてもきっと立派に活躍できるはずだと確信します。冒頭でご紹介した記事では、経団連が学校に“喝”を入れたというスタンスでしたが、提言されている内容は至極もっともだと思います。しかし、学校や教員に対して改革を強く求める文面から受ける印象が、上から目線のように映ってしまった感はあるのかもしれません。そういった感情的側面を横に置き、その内容に素直に目を向けると、ぜひ実現してほしいと思うものばかりです。
ただ、それでもまだ、どこかに何か引っ掛かりのようなものを感じてしまうのはなぜでしょうか。その原因は、同じく経団連が公表した資料の中にありました。
18年11月12日に経団連が発表した「2018年度 新卒採用に関するアンケート調査結果」には、経団連企業会員1376社に向けて行われた、大卒等新卒者の採用選考に関わる調査結果がまとめられています。
その中の、「選考にあたって特に重視した点」という項目には、次のように記されています。
「『コミュニケーション能力』が第1位(16年連続)、『主体性』が第2位(10年連続)となった。『チャレンジ精神』は、前年に比べて2.8ポイント低下したものの、3年連続で第3位となった」
企業が新卒採用する際に、特に重視したのは「コミュニケーション能力」です。それが、16年連続で1位となっています。採用に当たって「コミュニケーション能力」を重視すること自体が、必ずしも間違いだとは思いません。それも一つの大切な能力です。ただ、それが16年連続で1位になっているということは、少なくとも16年の間、企業の採用選考基準は大きく変化してこなかったのではないでしょうか。
一方、その16年の間に社会は大きく変化しています。携帯電話やインターネットが社会のインフラとして定着し、世界中の人がスマートフォンを所持する時代になりました。人々の価値観は多様化が加速し、グローバル競争はさらに激しくなりました。
それは、Society 3.0(工業社会)から4.0(情報社会)へと大きく変革する過渡期と重なっていたはずです。社会が変革すれば求められる人材の能力も同様に変わってくると思われますが、採用選考で企業が重視した1位は、ずっと変わらず「コミュニケーション能力」でした。
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