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上から目線? 経団連が発表した「教育界への提言」が、経済界へのブーメランなワケ隗より始めよ(2/4 ページ)

» 2020年12月04日 05時00分 公開
[川上敬太郎ITmedia]

(1)キャリア教育

 1つ目は、キャリア教育です。学校を出ていざ社会に出ようとしたときに、どんな仕事を選べばいいのか、自分には何ができるのか、全くイメージがつかずに不安な気持ちになった経験がある人は多いはずです。提言では、将来の職業生活を念頭に置いた教育や産業構造の変化に対応した教育を受ける機会が不足していると指摘しています。

 もし、早い段階からキャリアについて学ぶ機会を得て、自分なりの職業観を養い、社会人・職業人として自立するために必要な知識・技能を身につける教育を受けることができれば、戸惑うことが少なく、スムーズに学生から社会人へと移行できるようになると期待されます。

(2)STEAM教育

 2つ目は、STEAM教育です。「STEAM」は、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Arts(芸術)、Mathematics(数学)の頭文字からきています。つまり、STEAM教育とは、それらを総合的・横断的に学ぶことで問題発見力や解決力、想像性や創造性などを身に着けることを目標とするものです。思考力・判断力・表現力および主体性の養成などにも有効とされています。

 時代変化のスピードが加速度的に早まっていく中で、今後、前例のない社会的難題が次々と発生してくるような事態も想定されます。日本社会の未来を見据えたとき、瞬時に状況把握して問題点を洗い出し、問題解決の道筋をイメージし、必要に応じて新しい対処策を創造できるような人材を育成することは、重要な取り組みに違いありません。

従来の枠にとどまらない教育が求められる(出所:ゲッティイメージズ)

(3)情報教育

 3つ目は、情報教育です。Society 5.0において、ICT(情報通信技術)の利用は必要不可欠であり、必然的に情報活用能力も求められることになります。文部科学省では、情報活用能力の育成を図る情報教育の目標を次の3つの観点に整理しています。情報を適切に取得し発信できる「実践力」、情報に関する基礎的な理論や特性などを理解する「科学的な理解」、モラルや責任を踏まえて情報社会に「参画する態度」です。

 Society 5.0に向けての情報教育とは、IT技術者としてのスペシャリストを養成するという意味合いにとどまらず、あらゆる人材が有すべき基礎的能力を養成するものと位置付けられるでしょう。

(4)グローバル教育

 4つ目は、グローバル教育です。技術の進化によって社会のグローバル化がさらに進んでいくことを想定したとき、異文化や多様な背景を持つ集団の中でもリーダーシップを発揮し、他者と協働できる人材が求められることになります。

 ここで注意したいのが、グローバル教育とは単に語学を習得するということだけでなく、国際社会や地球規模といった広い視野から課題や解決策を考えられるような人材を育てることだという点です。

(5)ダイバーシティ&インクルージョン教育

 5つ目は、ダイバーシティ&インクルージョンについての教育です。提言では、性別、人種、国籍などを問わず、さまざまな個性や能力をもった人材が協働して社会的課題を解決し、オープンイノベーションを通じて新たな価値を創造することの重要性が指摘されています。また、そのためには公教育において、性別、人種、国籍、身体的能力、家庭環境などにとらわれず、誰もが平等に受けられる「誰一人取り残さない」教育を実現することなどが重要だとも指摘されています。

 それは言い換えると、一人一人の個性や有する能力を尊重し、その能力を生かそうとするスタンスです。個人の幸せと社会の発展を両立させる上で、根幹となる考え方だと思います。

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