社内コミュニケーションの変化としては、「全社会議」の事例もある。テレワーク導入前は年2回、全社員が集まる会議を東京ビッグサイトで開催していた。以前から「会社の方針をもっと聞きたい」という声が上がっており、小林社長も「半年に1回だと十分に話せないのがもどかしかった」という。会議の形式をWeb会議ツールに切り替えたことで、予算を考慮することなく、四半期に1回の開催に増やすことができた。また、業務の関係で全社会議に参加できない人たちも、後から動画で確認することができる。
全社会議のオンライン化によって、小林社長は「むしろ社員と近く感じるようになり、伝えやすくなった」と話す。その理由の一つは、リアルタイムで社員の反応を受け止めることができるようになったからだ。初めて開催したオンラインでの全社会議では、Web会議ツール「Zoom」のチャット機能を使った質問投稿や意見交換が盛り上がった。その声をその場で拾って、社長や事業部のトップらが返答する場面もあったという。「全社員が集まる会議であるため、対面だと双方向性をつくりにくいが、ネットならやりやすい」(小林社長)。小林社長自身も“楽しい”と感じる会議になったという。
今後は、質問や意見をさらに出しやすいようにする。Zoomのチャット機能では匿名の投稿ができないため、1月に予定している全社会議からは、Googleフォームを活用して匿名のアンケート形式でも質問を受け付けるようにするという。ツールを組み合わせて、さらに双方向性が高い全社会議に変えていく方針だ。
「外部との連携」においてリモート化がもたらした効果も大きい。BFTでは、社員向けの研修開発など、複数の業務で外部のコンサルタントなどの力を借りている。社員研修では、これまでは研修当日に講師をやってもらうことが中心だった。しかし、テレワーク導入によりオンラインでの業務が当たり前になったことで、研修を作り込む段階から外部の人に参加してもらえるようになった。オンラインであれば、1時間単位で仕事を依頼することもできるからだ。
「1〜2時間だけ来社してもらう、というのは現実的ではなかったが、オンラインなら手軽に依頼できる」(小林社長)。BFTにとっては、研修を作るプロセスで小刻みに専門的な意見を取り込むことで、より充実した研修を社員に提供できるようになる。外部の取引先にとっても、移動することなく仕事をする機会が増える利点がある。
今では、こうした取り組みを多くの業務に広げている。社員も、当初は外部の人がプロジェクトに頻繁に参加することに戸惑いもあったが、自分たちにない知見を得られることもあり、今は“普通”のことになっているという。「研修のほかにも、新卒採用戦略や中期計画の立案、オウンドメディア運営などの広報活動といったように、いろいろな部署で手伝ってくれる人が増えている。外部との連携に関しては、テレワークによって成功しているのでは」と小林社長は話す。
小林社長は「今後も働き方を元に戻そうとは思っていない」と話す。そして、さらに柔軟な働き方を取り入れることも視野に入れる。フレックスタイム制やワーケーションの導入も検討しているという。時間を効率的に活用して生産性を高める方向に、さらに向かっていく方針だ。
BFTの事例を見ると、もはや「テレワークに切り替えても効率を下げない」ことに取り組む段階は過ぎている。リモートだからこそ発揮できる効果に気付き、それをうまく利用することが、これからは求められるだろう。
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