地価の伸び率は全国一 ”基地の島”沖縄ならではの不動産カルチャー(2/4 ページ)

» 2020年12月23日 07時00分 公開
[長濱良起ITmedia]

米軍基地の返還で「売却時の値段は上がる」

 物件的魅力のある軍用地だが、返還に伴う“損”は無いのか。日米両政府は13年、県内の別の場所への基地移転などを条件に、人口が密集している沖縄本島中南部(嘉手納飛行場以南)にある基地返還を進める「統合計画」を公表し、基地の整理縮小の道筋を示している。

 徳松氏は「返還されたらされたで、売却時の値段は上がります」と話す。現状、沖縄本島内の新興商業地が米軍基地の返還跡地であることが多い。那覇市の新都心地区は商業店舗やオフィスが多く軒を連ね、北谷町のハンビー地区はビーチリゾート地区としても発展する人気のエリアだ。北中城村のライカム地区は九州・沖縄地区最大級のショッピングモールで広い商圏を誇る。「利回りが低くても欲しいという人はたくさんいます」と徳松氏はその人気を語る。

北谷町美浜のリゾート地区は返還跡地と一体的な開発で発展した(提供:ゲッティイメージズ)

 「日本政府が地主に払う軍用地の賃料は過去30年間、下がったことがありません。毎年複利で1%ちょっと上がっています」と話すのは、不動産事業やファンド関連事業など7社を展開する株式会社財全グループ(沖縄県浦添市)代表取締役の浦崎直壮氏だ。

 軍用地の面積当たりの賃料は、軍用地主会と国との協議で決まる。さらにその賃料に対して、例えば「嘉手納飛行場」「普天間飛行場」といったような基地ごとに変動する「倍率」をかけた金額がその軍用地の売買価格となる。浦崎氏は目の前に見えるキャンプ・キンザー(牧港補給地区)を見下ろしながら「キンザーの倍率は55倍から60倍です」と説明する。キンザーは、沖縄本島を南北に走る大動脈・国道58号を基準に、那覇市の北隣・浦添市の西側ほぼ全てを占有している。24年度以後の返還が予定されており、立地の良さから市街地の大規模な再開発が計画されている。そのため「55〜60倍」という倍率は人気があるがゆえに付いた数字だ。

 また、この倍率は、米軍基地の中でも重点施設とされる所に高くつくという。極東最大の米空軍基地で移転の可能性が低い嘉手納飛行場の倍率は64〜65倍ともいわれる。那覇空港と滑走路を共同利用する航空自衛隊那覇基地や、逆に返還計画はあるが今後の利用価値の高さが見込まれる那覇軍港も高倍率とされる。

 この倍率自体もどんどん高騰している状況で、浦崎氏は軍用地の価格について「史上最高」と強調する。県外からの購入者が増えたことや、インバウンドが盛り上がり始めたここ5、6年では、外国人が一般の土地や建物と同様に軍用地も投資案件として購入し始めているという。

 同社グループ企業・ソーシャルバンクZAIZEN株式会社(松森敦代表)は、「不動産を担保にしてお金を借り入れたい人」と「投資家」の双方をつなぎ合わせる貸付型(融資型)のクラウドファンディング「Pocket Funding」を展開している。同サービスでは軍用地案件も取り扱っており、東京や大阪などで展開する他社にはない色合いが鮮明になっている。沖縄の地価上昇や人口増加、観光地としてのポテンシャルも相まって、沖縄県外の投資家を集めている。

キャンプ・キンザーを背景に立つ財全グループの浦崎直壮代表取締役(右)とソーシャルバンクZAIZENの松森敦代表

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