トヨタの改革はとにかく手数が多い。コモンアーキテクチャーをやったと思えば、GRファクトリーでは精密手組工程のライン化という、途方もない取り組みを始めた。2000年代の量産性重視と引き替えに品質を軽視したことで失った信頼を取り戻そうと思えば、圧倒的なクルマの良さをアピールしなくてはならない。トヨタはレース用車両の制作時に行われる緻密な高精度組立を、市販車製造に持ち込むことを企画した。
1台ずつ高精度治具に据え付けて、熟練工が組み付ける。部品もレーザーで3次元測定して、公差のブレ方向の相性を見て選別する。組む前、組んだ後も全部3次元測定で計測だ。普通、セル生産といえば、最初から最後まで一カ所で組み立てるものだが、それを区切りの良い工程に分割して、セルからセルへと無人搬送車で運ぶ。このやり方なら、セルであるにもかかわらず、大型の自動機械も入れられる。職人がやって良くなるところは職人が、ロボットがやって良くなるところはロボットがやる。
大量生産とは違うし、ハンドメイドとも違う。強いていえばハンドメイドの究極的効率化である。そういうことをトヨタはやった。その成果がGRヤリスである。
精密手組工程のライン化という、「もっといいクルマ」に向けての取り組みにも着手。生産効率への過度な傾倒から、ハンドメイドの究極的効率化も果たした
- トヨタの大人気ない新兵器 ヤリスクロス
ついこの間、ハリアーを1カ月で4万5000台も売り、RAV4も好調。PHVモデルに至っては受注中止になるほどのトヨタが、またもやSUVの売れ筋をぶっ放して来た。
- MX-30にだまされるな
マツダの電動化の嚆矢(こうし)となるMX-30をどう見るか? このクルマのキャラクターをつかもうと思うのであれば、変化球モデルだと思わない、スポーツ系モデルだと思わない、ついでにフリースタイルドアのことも電動化のことも全部忘れる。そうやって全部の先入観を排除して、普通のCセグのSUVだと思って乗ってみてほしい。その素直で真面目な出来にびっくりするだろう。
- GRヤリス 一番速いヤツと一番遅いヤツ
GRヤリスの試乗会は今回が3度目である。そして年の瀬の足音が近づいてきた今頃になって、ようやく公道試乗会に至ったわけである。多分GRヤリスが欲しいという大抵の人には、RZ“High performance”がお勧めということになるだろう。こういうクルマは、買ってから後悔するくらいなら全部載せが無難だ。
- 新型ハリアーはトヨタの新たな到達点
トヨタは、売れ筋のSUVマーケットにまた強力な新兵器を投入する。SUVバリエーションの最後のピースであるハリアーだ。結論からいえば、新型ハリアーは、多面的なその調律に成功し、トヨタブランドの範疇(はんちゅう)の高級というものが、バラバラの要素ではなく、一つの方向にキチンと収斂(しゅうれん)して、なるほどと思わせるものになっていた。
- 強いトヨタと厳しい日産
日本の自動車メーカーは調子が良いのか悪いのか、とくにここ数年中国の景気悪化が伝えられており、その影響が心配される。全体を見て、とにかくこの逆境下で強さに圧倒されるのがトヨタで、ちょっと言葉を失う厳しさに直面しているのが日産だ。スズキとマツダは日産を見るとまだ救われるが、下を見て安心していていい状況とは思えない。概要としては各社そろって、程度の差はあれど逆境である。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.