クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

2020年最も読まれた記事池田直渡「週刊モータージャーナル」(4/6 ページ)

» 2020年12月28日 07時00分 公開
[池田直渡ITmedia]

GRファクトリーの改革

 トヨタの改革はとにかく手数が多い。コモンアーキテクチャーをやったと思えば、GRファクトリーでは精密手組工程のライン化という、途方もない取り組みを始めた。2000年代の量産性重視と引き替えに品質を軽視したことで失った信頼を取り戻そうと思えば、圧倒的なクルマの良さをアピールしなくてはならない。トヨタはレース用車両の制作時に行われる緻密な高精度組立を、市販車製造に持ち込むことを企画した。

 1台ずつ高精度治具に据え付けて、熟練工が組み付ける。部品もレーザーで3次元測定して、公差のブレ方向の相性を見て選別する。組む前、組んだ後も全部3次元測定で計測だ。普通、セル生産といえば、最初から最後まで一カ所で組み立てるものだが、それを区切りの良い工程に分割して、セルからセルへと無人搬送車で運ぶ。このやり方なら、セルであるにもかかわらず、大型の自動機械も入れられる。職人がやって良くなるところは職人が、ロボットがやって良くなるところはロボットがやる。

 大量生産とは違うし、ハンドメイドとも違う。強いていえばハンドメイドの究極的効率化である。そういうことをトヨタはやった。その成果がGRヤリスである。

精密手組工程のライン化という、「もっといいクルマ」に向けての取り組みにも着手。生産効率への過度な傾倒から、ハンドメイドの究極的効率化も果たした

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