クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

2020年最も読まれた記事池田直渡「週刊モータージャーナル」(5/6 ページ)

» 2020年12月28日 07時00分 公開
[池田直渡ITmedia]

トヨタの決算

 トヨタと日産を決算で比べるのはいささか気の毒だが、日産は目先の利益に囚われたことが敗因である。開発コストを抑え、生産設備の更新を抑えればそれは見かけの利益は出る。しかし製品の鮮度は否応なく落ちていく。それは未来の利益の前借りに過ぎない。

 日産は12年頃から国内向けの新車をほぼリリースしなくなり、やがてそれは海外モデルにまで波及した。その結果が利益を圧迫して後に初めて事態を把握して、今追い詰められた状態で大量のモデルチェンジに挑んでいる。お金の無い中での大投資は見ている側もとても苦しく感じる。

 しかし、少なくともその一歩目は上手くいったようだ。聞くところによると、ノート e-POWERは、相当に出来が良いらしい。それは何よりだし、のど元まで迫った最大のピンチは回避できたといえよう。ただし、1本当てれば一安心という状態にまだ日産はなっていない。おそらく3本くらい連続でヒットを出さないといけない。まだまだ道は厳しい。

 本稿で書いてきたように、トヨタは、マズいと思ったらすぐ方針を全面的に変えた。気付かぬ間は仕方ないが、気付いてからが問題だ。日産は弥縫策(びほうさく)に無駄な時間を使ったことを真に反省して、未来への投資、そしてこの状況にもかかわらず支えてくれるファンに向けて、最高のユーザー体験を提供できるように頑張ってほしい。

日産起死回生の新型車「ノート e-POWER」は、相当に出来が良いらしい

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