トヨタと日産を決算で比べるのはいささか気の毒だが、日産は目先の利益に囚われたことが敗因である。開発コストを抑え、生産設備の更新を抑えればそれは見かけの利益は出る。しかし製品の鮮度は否応なく落ちていく。それは未来の利益の前借りに過ぎない。
日産は12年頃から国内向けの新車をほぼリリースしなくなり、やがてそれは海外モデルにまで波及した。その結果が利益を圧迫して後に初めて事態を把握して、今追い詰められた状態で大量のモデルチェンジに挑んでいる。お金の無い中での大投資は見ている側もとても苦しく感じる。
しかし、少なくともその一歩目は上手くいったようだ。聞くところによると、ノート e-POWERは、相当に出来が良いらしい。それは何よりだし、のど元まで迫った最大のピンチは回避できたといえよう。ただし、1本当てれば一安心という状態にまだ日産はなっていない。おそらく3本くらい連続でヒットを出さないといけない。まだまだ道は厳しい。
本稿で書いてきたように、トヨタは、マズいと思ったらすぐ方針を全面的に変えた。気付かぬ間は仕方ないが、気付いてからが問題だ。日産は弥縫策(びほうさく)に無駄な時間を使ったことを真に反省して、未来への投資、そしてこの状況にもかかわらず支えてくれるファンに向けて、最高のユーザー体験を提供できるように頑張ってほしい。
日産起死回生の新型車「ノート e-POWER」は、相当に出来が良いらしい
- トヨタの大人気ない新兵器 ヤリスクロス
ついこの間、ハリアーを1カ月で4万5000台も売り、RAV4も好調。PHVモデルに至っては受注中止になるほどのトヨタが、またもやSUVの売れ筋をぶっ放して来た。
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マツダの電動化の嚆矢(こうし)となるMX-30をどう見るか? このクルマのキャラクターをつかもうと思うのであれば、変化球モデルだと思わない、スポーツ系モデルだと思わない、ついでにフリースタイルドアのことも電動化のことも全部忘れる。そうやって全部の先入観を排除して、普通のCセグのSUVだと思って乗ってみてほしい。その素直で真面目な出来にびっくりするだろう。
- GRヤリス 一番速いヤツと一番遅いヤツ
GRヤリスの試乗会は今回が3度目である。そして年の瀬の足音が近づいてきた今頃になって、ようやく公道試乗会に至ったわけである。多分GRヤリスが欲しいという大抵の人には、RZ“High performance”がお勧めということになるだろう。こういうクルマは、買ってから後悔するくらいなら全部載せが無難だ。
- 新型ハリアーはトヨタの新たな到達点
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- 強いトヨタと厳しい日産
日本の自動車メーカーは調子が良いのか悪いのか、とくにここ数年中国の景気悪化が伝えられており、その影響が心配される。全体を見て、とにかくこの逆境下で強さに圧倒されるのがトヨタで、ちょっと言葉を失う厳しさに直面しているのが日産だ。スズキとマツダは日産を見るとまだ救われるが、下を見て安心していていい状況とは思えない。概要としては各社そろって、程度の差はあれど逆境である。
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