「終電繰り上げ」は再成長の準備 2021年の鉄道ビジネス、“前向きなチャレンジ”が闇を照らす杉山淳一の「週刊鉄道経済」新春特別編(2/5 ページ)

» 2021年01月02日 07時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

 言うまでもなく、社会経済の問題はCOVID-19対策が解決する。鉄道業界のみならず、あらゆるビジネスがそうだ。しかし解決を信じた上で、その時のために今やるべきことはある。それが終電繰り上げだ。終電を繰り上げたとしても、車両や線路がある限り、すぐに元に戻せる。終電繰り上げは「元に戻せる施策」だ。

 しかしCOVID-19対策が長期化し、電車の寿命が来た場合、鉄道事業者は同じ数の代替車両を導入しにくい。しなの鉄道のように、新型車両の導入計画を遅らせ、古い車両を延命する会社もある。このまま車両延命の限界が来て、旅客需要の低迷が続き、新車導入を絞ったら、現在の運行本数にはすぐに戻せない。医療関係者が外出を控え、会食を控え、移動を控えろという理由は、人々の健康だけが理由ではない。COVID-19対策が長期化すれば、いずれ社会資本が持たなくなる。

しなの鉄道が導入する新型車両「SR1系一般車」。2026年度までに52両を導入する計画を、27年までに最大46両と下方修正した(出典:しなの鉄道報道資料)

 線路保守がはかどることは良いことだ。2020年終わり頃、高輪ゲートウェイ駅周辺で、明治5年の鉄道開業時の築堤が出土した。つまりここでは約150年にわたって線路を使っていた。もちろん整備改良が続いていたから現在まで使えたわけだ。大都市圏の鉄道は長期にわたって整備し続けていた。とはいえ、機会があれば刷新したい箇所もあるはず。東海道新幹線だって開業50年を超えて大改良の必要があり、それがリニア中央新幹線の建設理由の一つになっている。

 いつかCOVID-19対策が成し、再成長に転じたとき、より良い線路状態にしておく。今年のダイヤ改正はその準備と考えたい。

JR東日本は東京圏のほとんどの路線で終電時刻を繰り上げる(出典:JR東日本報道資料)

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