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» 2020年11月06日 07時00分 公開

杉山淳一の「週刊鉄道経済」:「通勤」は減っていく? 東急の6700人アンケートから読み解く、これからの鉄道需要 (1/5)

東急は、アプリを通じて6760人に実施したアンケート結果を発表した。新型コロナの影響で在宅勤務などが広がり、鉄道の需要は低下。しかし、今後も定期券を更新する人は多く、転居しようとする人も少ない。通勤需要は元通りには戻らないが、ある程度回復しそうだ。

[杉山淳一,ITmedia]

 東急は9月17日、公式サイトで「生活行動と交通に関するアンケート 調査結果概要のご報告」を掲載した。2020年6月から7月にかけて「東急線アプリ」の利用者に参加を呼びかけ、6760人の回答を集めた。その集計結果だ。なるほど、鉄道利用者の動向を知るために、その手があったか。東急は賢い。

 東急線アプリは、列車やバスの運行情報、振替乗車、乗換案内を利用するために作られた。駅の改札口の混雑状況を知らせる機能も話題になった。無料で使えることもあって、東急の電車やバスを利用するなら必携のアプリと言っていい。私もバスの位置情報や待ち時間を知るために愛用している。東急沿線のユーザーに浸透している。

 東急はこのアプリを「ユーザーへ情報提供する」だけではなく「ユーザーから生の情報を得る」ために使った。この発想が良い。利用者は主に通勤通学利用者とみられるけれど、リアルな生の声を収集、集計した貴重な資料だ。同様のアプリを公開している他の鉄道事業者でも実施してもらいたい。サンプル数が多いほど有用なデータになる。

東急が新型コロナによる社会変化を見据え、今後の交通の在り方を検討するためのアンケートを実施した

 ウィズコロナ、新生活様式など、私たちの暮らしの変化に関心が高まっている。リモートワークの普及で通勤は減る。在宅勤務のワークスペース問題解決のため、不動産は活況になる。通信機器の需要は増える。そんな予測もある一方で、緊急事態宣言解除、「Go To トラベルキャンペーン」の実施により、外出自粛解禁ムードも高まっている。

 私たちのこれからの暮らしはどうなるか。通勤する人々、雇用する会社、その周辺の飲食店など生活サービスに関わる人々、社会インフラに携わる人々の関心は高い。しかし、正確に予測するための根拠となる資料は少ない。「こうなるだろう」「こうならないだろう」という臆測ばかりが横行する感がある。実際はどうか、東急が公開したデータから読み取っていきたい。

東急電鉄は鉄道事業エリアを3つに区分している。「田園都市線・大井町線・こどもの国線・世田谷線」「東横線・目黒線」「池上線・多摩川線」だ。延伸予定・構想線は黒点線で示した。灰色はバス路線網の範囲を示す(地理院地図を加工)

 なお、東急によると、公開はデータのみ、図表は外部制作会社によるため引用は控えてほしいとのことだ。読者貴兄には元のファイル(生活行動と交通に関するアンケート 調査結果概要のご報告)を開いて参照していただきたい。また、この記事の考察は私のものであり、東急の見解ではないことをおことわりしておく。

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