「終電繰り上げ」は再成長の準備 2021年の鉄道ビジネス、“前向きなチャレンジ”が闇を照らす杉山淳一の「週刊鉄道経済」新春特別編(4/5 ページ)

» 2021年01月02日 07時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

前向きなチャレンジに希望を

 20年に国民一人一人に実施された10万円の「特別定額給付金」については、「将来の不安から貯蓄に回ってしまった」「実質的に1万円しか消費に結びついていなかった」などの批判報道がある。私は食洗機を買って経済を回そうと思っていた。老母の負担を減らしたいという口実で、本音は「面白そうだから」。江戸っ子だからあぶく銭は楽しいことに使いたい。

 しかし、実際には被災したローカル線の寄付金、クラウドファンディングで使い切ってしまった。鉄道のネタでメシを喰ってるわけで、流行ったドラマのせりふを借りて言えば「恩返し」だ。もちろん返礼品目当てのクラウドファンディングもある。初めてふるさと納税を経験し、秋田県の電車「アオガエル」の修理に寄付した。それだけでも満足だったけれども、返礼品のきりたんぽ鍋が美味だった。

 本稿執筆中に四国からクラウドファンディングの返礼品が届いた。「リベンジ!寝台特急『なは』B寝台車両、同時輸送を叶えたい」だ。かつて寝台特急「なは」で使われていたブルートレインの客車が列車ホテルとして再生されたはずが破綻していた。現在は鹿児島県で放置されている。それを四国のうどん店店主が引き取り、再び列車ホテルとして再生したいという。

 私は最も低価格な1万円コースを申し込んだ。ただ車両を保存するだけなら見送っていたけれども、このプロジェクトは「ビニールハウスで車両を覆い劣化を防ぐ」というアイデアが面白かった。うまくいけば、今後の車両保存プロジェクトの参考になるだろう。その実験的な意義もある。

 このプロジェクトは目標額450万円に対して732万円を集めて成功した。手元にある返礼品のステッカーと記念きっぷ、礼状を読んで涙が出た。何かと暗いニュースが多い中で、前向きなチャレンジをした人がいた。私も含めて、そこに希望を持った人たちがいた。

香川県から届いたクラウドファンディング返礼品。明るい話題を仕掛けていく勇気に感動した

 私がJR北海道の「流氷物語号」とゲーム『オホーツクに消ゆ』のコラボを手伝った(関連記事)理由も、自分にできる範囲で、何か明るいニュースを作りたかったからだ。JR北海道についてはつらいニュースが多いし、その施策に疑問もある。しかし、私が北海道の鉄道を応援したい気持ちに変わりはないから、自分にできる範囲でできることをした。窓口になってくれたJR北海道の関係者はどうか。直接やりとりはしていないし、30年前のゲームを知らないかもしれないけれど、明るい気持ちになってくれたらいいと思う。

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