「終電繰り上げ」は再成長の準備 2021年の鉄道ビジネス、“前向きなチャレンジ”が闇を照らす杉山淳一の「週刊鉄道経済」新春特別編(1/5 ページ)

» 2021年01月02日 07時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

 私は2021年から「コロナ」「新型コロナウイルス」という言葉をやめて「COVID-19」を使おうと思う。コロナはもともと「明るい言葉」だ。ラテン語で冠、そこから太陽の外周という意味に転じた。それがウイルスに似ているからと、コロナが病気の代名詞になった。人々の意識の問題として、まず、コロナという言葉のイメージ回復が必要だと思う。

 さて、鉄道業界に限らず、2020年は世界的に散々な年だった。COVID-19のせいだ。鉄道業界がどれだけヒドいことになっていたか、誰もが知っていることを書いても気持ちが落ちるから繰り返さない。私たちの関心は、2020年を「どん底にする」方法だ。そのために21年をいかに上向きにしていくか。その手掛かりになる。

2021年は感染対策を徹底した「趣味性の高い旅行」が回復のカギに。写真は20年12月に開催された「サロンカーなにわ」の団体ツアー。もともと座席配置がゆったりしている上に定員を減らして募集した

「終電繰り上げ」ダイヤ改正を前向きに捉える

 21年の鉄道業界の大きな動きは、3月に実施される全国ダイヤ改正だ。毎年恒例のことではあるけれど、今年は新線、新列車の誕生のような華々しさより、「終電繰り上げ」の印象が強い。不便になる人も多いかと思う。しかし、実は前向きな施策といえる。

 終電を繰り上げると利用者以外にも影響が大きい。飲食店や遊興施設などナイトタイムエコノミーはビジネス機会を失う。実は都会の真の終電は始発電車だった。都会の始発電車に乗ると、釣りやゴルフなど、早朝から出掛けて休暇を過ごす人の中に、前日を引きずる酔客や飲食店関係者、夜勤明けの人々が混じる。「終電が無ければ始発まで店内で過ごしてもらえばいい」という逆転の発想も、今は自治体からの時短営業要請でままならない。

 鉄道事業者は乗客減に悩み、少しでも経費を削減したい。だから利用率の少ない時間帯で減便する。これは事実。しかし、保守時間帯を延長して、携わる人員を確保したい。負担を軽減したい。これも事実。どちらも大都市の鉄道事業者では長年の課題となっていた。語弊があると承知で言うけれど、COVID-19のおかげで対策実施を決心できた。

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