クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

圧倒的に正しいEV登場池田直渡「週刊モータージャーナル」(4/6 ページ)

» 2021年01月11日 07時00分 公開
[池田直渡ITmedia]

超小型モビリティの幕開け

 シーポッドは、日本初の形式認定済み超小型モビリティであり、自動車専用道路を除けば、どこでも自由に走行することができる。従来の「超小型モビリティ」はあらかじめ定められたエリア内で運用する必要があり、今回型式認定を取得したことにより、どこでも走れるようになった。

全長2490ミリ×全幅1290ミリ×全高1550ミリのサイズは、のっぽに見えるが、立体駐車場をクリアできる高さにとどめてある

 この超小型モビリティの規定に最高時速の取り決めがあるため、最高時速は一般道の法定速度に合わせた60キロに制限されており、併せて時速40キロでの前面衝突テストの実施が求められている。つまりクルマの最高速度からの事故であっても、ノーブレーキでない限りは安全というラインを定めている規定ということになる。

 余談を加えれば、国交省では、この超小型モビリティに向けた安全基準として、従来の保安基準を緩和し、フルラップ前面衝突を時速50キロから40キロへ、オフセット前面衝突を時速56キロから40キロへ、さらにポールへの側面衝突試験を非適用にした。安全は重要なのだが、あれもこれも登録車や軽自動車の基準にそろえれば、価格的にそれらと拮抗(きっこう)してしまい、超小型モビリティというセグメント自体の価値が薄まる。緩和とセットで速度上限を設けることでこのバランスを取ったともいえる。

 何よりもカーボンニュートラルが叫ばれる今、ボディの軽さは正義である。ボディパネルに樹脂を採用するシーポッドは2グレード構成で、それぞれ670キロと690キロと、バッテリーを搭載しているにもかかわらず、ガソリンエンジンオンリーの軽自動車の最軽量クラスと同等の車両重量だ。EVは走行時にゼロエミッションではあるが、現在の日本の電源構成は70%が化石燃料由来であり、遠い将来はともかく。現状としてはEVにも電費を求めるのは当然だ。だから重くて豪華装備なEVをカーボンニュートラルの軸で語るのは無理があるのだ。そんなクルマは再エネがほぼ100%のノルウェーで走るべきだ。

 ということで、今の時代が求める軽く安くの代償として時速60キロの制限がついていると考えればいい。逆にいえば高速道路を利用してもっと速度を出したい人には、軽自動車のターボもあれば、登録車もある。自由に選べるのだ。

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