モビリティ全体のバランスを考えた時、営業車需要から見てこの超小型モビリティが果たす役割は大きい。次なる一手として、シーポッドがパーソナルな需要の一部を支えることは可能だと思う。シーポッドは駐車スペースによっては従来の1台分に2台駐車できる。都市部での駐車場の問題も改善する可能性があるが、それでも置けるスペースの限界がある。おそらくもう1つ下にも新たな移動手段が必要になる。
本来、カーボンニュートラルの達成を視野にいれて、人間1人が移動するためにはもっとミニマムな移動手段があるべきで、欧州では国によって、電動キックボードのシェアリングが普及しているところもある。ただし日本の都市部の交通密度では、キックボードはちょっと俊敏性が高すぎる。
右から立ち乗りタイプ、着座タイプ、車椅子接続タイプの3種類。立ち乗りタイプは最高時速10キロ、他は6キロとなる予定。連続走行距離は約14キロ
特に都心の駐車時間単価3600円クラスのエリアでは、キックボード並みに置き場を選ばない移動手段があれば移動のコストが下がる。トヨタはそこに立ち乗り型の「歩行領域モビリティ」を用意するとともに、それをベースにした電動車椅子に近い高齢者仕様も用意した。
トヨタは、おそらくこのシーポッドの個人向け販売も、この歩考領域モビリティも、KINTOに結び付けるだろう。保険や税金なども、新企画に併せてそれなりに配慮されているだろうこれらの商品は、全部まとめても価格へのインパクトが少ないことが予想され、顧客がメリットを感じやすくなるはずである。かつ、どちらも極めて実用品であり、所有欲を強く刺激する商品ではないからだ。そういう意味でも、これまでのクルマとさまざまな意味でユーザー体験が変わることになるかもしれない。
1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミュニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。
以後、編集プロダクション、グラニテを設立し、クルマのメカニズムと開発思想や社会情勢の結びつきに着目して執筆活動を行う他、YouTubeチャンネル「全部クルマのハナシ」を運営。コメント欄やSNSなどで見かけた気に入った質問には、noteで回答も行っている。
- 「超小型EV」でEVビジネスを変えるトヨタの奇策
モーターショーに出品されたトヨタの「超小型EV」。これは多分東京の景色を変える。EVの最大の課題は高価なバッテリーだ。「値段を下げられるようにバッテリーを小さくしよう」。いやいやそんなことをしたら航続距離が足りなくなる。だからみんな困っているのだ。ならば、航続距離がいらないお客さんを選んで売ればいい。これがトヨタの奇策だ。
- トヨタの電動化ゲームチェンジ
世間からはずっと「EV出遅れ」と言われてきたトヨタ。今回、電動化車両550万台達成を5年前倒して2025年とするとアナウンスした。そのために、従来のパナソニックに加え、中国のバッテリーメーカー、BYDおよびCATLとも提携した。さらに、用途限定の小規模EVを作り、サブスクリプションモデルを適用するというゲームチェンジをしてみせたの。
- ガソリン車禁止の真実(考察編)
「ファクト編」では、政府発表では、そもそも官邸や省庁は一度も「ガソリン車禁止」とは言っていないことを検証した。公的な発表が何もない。にも関わらず、あたかも30年にガソリン車が禁止になるかのような話が、あれだけ世間を賑わしたのはなぜか? それは経産省と環境省の一部が、意図的な観測気球を飛ばし、不勉強なメディアとEVを崇拝するEVファンが、世界の潮流だなんだと都合の良いように言説を振りまいたからだ。
- ガソリン車禁止の真実(ファクト編)
年末の慌ただしい時期に、自動車業界を震撼(しんかん)させたのがこのガソリン車禁止のニュースだった。10月26日の菅義偉首相の所信表明演説と、12月11日の小泉進次郎環境大臣会見が基本になるだろう。カンタンにするために、所信表明演説を超訳する。
- RAV4 PHVとHonda e予約打ち切り どうなるバッテリー供給
トヨタRAV4 PHVと、ホンダのHonda eの予約注文が中止になった。両車とも想定以上に売れたことが理由なのだが、トヨタははっきりとバッテリーの供給が間に合わないと説明している。ホンダは予定生産台数の国内配分枠を売り切ったからというのが正式説明だが、まあおそらくは、その予定生産量を決めているのはバッテリーの供給量だと踏んで間違いはあるまい。
- 日本のEVの未来を考える(前編)
EVの未来について、真面目に考える記事をそろそろ書くべきだと思う。今の浮ついた「内燃機関は終わりでEVしか生き残れない論」ではないし、「EVのことなんてまだまだ考える必要ない論」でもない。今何が足りないのか? そしてどうすれば日本でEVが普及できるのかという話だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.