クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

圧倒的に正しいEV登場池田直渡「週刊モータージャーナル」(6/6 ページ)

» 2021年01月11日 07時00分 公開
[池田直渡ITmedia]
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さらにもう一手

 モビリティ全体のバランスを考えた時、営業車需要から見てこの超小型モビリティが果たす役割は大きい。次なる一手として、シーポッドがパーソナルな需要の一部を支えることは可能だと思う。シーポッドは駐車スペースによっては従来の1台分に2台駐車できる。都市部での駐車場の問題も改善する可能性があるが、それでも置けるスペースの限界がある。おそらくもう1つ下にも新たな移動手段が必要になる。

 本来、カーボンニュートラルの達成を視野にいれて、人間1人が移動するためにはもっとミニマムな移動手段があるべきで、欧州では国によって、電動キックボードのシェアリングが普及しているところもある。ただし日本の都市部の交通密度では、キックボードはちょっと俊敏性が高すぎる。

右から立ち乗りタイプ、着座タイプ、車椅子接続タイプの3種類。立ち乗りタイプは最高時速10キロ、他は6キロとなる予定。連続走行距離は約14キロ

 特に都心の駐車時間単価3600円クラスのエリアでは、キックボード並みに置き場を選ばない移動手段があれば移動のコストが下がる。トヨタはそこに立ち乗り型の「歩行領域モビリティ」を用意するとともに、それをベースにした電動車椅子に近い高齢者仕様も用意した。

 トヨタは、おそらくこのシーポッドの個人向け販売も、この歩考領域モビリティも、KINTOに結び付けるだろう。保険や税金なども、新企画に併せてそれなりに配慮されているだろうこれらの商品は、全部まとめても価格へのインパクトが少ないことが予想され、顧客がメリットを感じやすくなるはずである。かつ、どちらも極めて実用品であり、所有欲を強く刺激する商品ではないからだ。そういう意味でも、これまでのクルマとさまざまな意味でユーザー体験が変わることになるかもしれない。

筆者プロフィール:池田直渡(いけだなおと)

 1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミュニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。

 以後、編集プロダクション、グラニテを設立し、クルマのメカニズムと開発思想や社会情勢の結びつきに着目して執筆活動を行う他、YouTubeチャンネル「全部クルマのハナシ」を運営。コメント欄やSNSなどで見かけた気に入った質問には、noteで回答も行っている。


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