トヨタでは、営業が中心となって、すでに数年前より、200団体を越える企業や公的機関に対し需要の聞き取りを進めるとともに、予約受け付けを固めてきており、これらの団体への納入から着手するため、一般販売の開始は22年が目処となっている。
例えば電力会社やガス会社に銀行、保険会社や電信電話、オフィス回りのSEなど、企業イメージとしては、カーボンニュートラルに前向きな姿勢を取ってEVを採用したいものの、まさか営業車に300万円オーバーは払えない顧客がたくさんいる。これらの車両は一日に50キロも走らないケースが多く、小量のバッテリーを搭載したEVに向いている。しかもこれらのクルマは定期的に必ず更新需要があり、需要の継続性も見込める。
9.06kWhのリチウムイオン・バッテリーをシート床下に配置して、低床フラットフロアを実現
冒頭で述べた仕様はすべて、顧客への聞き取りから策定されたものであり、かつ少なくとも今後1年分の生産分はすでに予約が取れている。クルマを出してみたけれど、売れるかどうかはマーケット任せというやり方ではなく、出した分がきっちり売れる仕組み作りができており、戦う前から勝算が掌中にあるという意味で、トヨタのしたたかさが見える。
ついでにいえば、これでトヨタのEV販売台数のカウンターもバンバン上がるだろう。おそらく21年の国内最量販EVの座はシーポッドが勝ち取ることは間違いない。何しろ予約台数を生産するだけ。しかも、生産の最大の制約条件であり供給がひっ迫しているバッテリーは9.06kWhと小量で済む。「Honda e」 とマツダ「MX-30」のEVモデルが35kWh。日産リーフは40kWhと60kWh。つまり同じバッテリーの供給リソースを確保したら3台から6台は作れる。
- 「超小型EV」でEVビジネスを変えるトヨタの奇策
モーターショーに出品されたトヨタの「超小型EV」。これは多分東京の景色を変える。EVの最大の課題は高価なバッテリーだ。「値段を下げられるようにバッテリーを小さくしよう」。いやいやそんなことをしたら航続距離が足りなくなる。だからみんな困っているのだ。ならば、航続距離がいらないお客さんを選んで売ればいい。これがトヨタの奇策だ。
- トヨタの電動化ゲームチェンジ
世間からはずっと「EV出遅れ」と言われてきたトヨタ。今回、電動化車両550万台達成を5年前倒して2025年とするとアナウンスした。そのために、従来のパナソニックに加え、中国のバッテリーメーカー、BYDおよびCATLとも提携した。さらに、用途限定の小規模EVを作り、サブスクリプションモデルを適用するというゲームチェンジをしてみせたの。
- ガソリン車禁止の真実(考察編)
「ファクト編」では、政府発表では、そもそも官邸や省庁は一度も「ガソリン車禁止」とは言っていないことを検証した。公的な発表が何もない。にも関わらず、あたかも30年にガソリン車が禁止になるかのような話が、あれだけ世間を賑わしたのはなぜか? それは経産省と環境省の一部が、意図的な観測気球を飛ばし、不勉強なメディアとEVを崇拝するEVファンが、世界の潮流だなんだと都合の良いように言説を振りまいたからだ。
- ガソリン車禁止の真実(ファクト編)
年末の慌ただしい時期に、自動車業界を震撼(しんかん)させたのがこのガソリン車禁止のニュースだった。10月26日の菅義偉首相の所信表明演説と、12月11日の小泉進次郎環境大臣会見が基本になるだろう。カンタンにするために、所信表明演説を超訳する。
- RAV4 PHVとHonda e予約打ち切り どうなるバッテリー供給
トヨタRAV4 PHVと、ホンダのHonda eの予約注文が中止になった。両車とも想定以上に売れたことが理由なのだが、トヨタははっきりとバッテリーの供給が間に合わないと説明している。ホンダは予定生産台数の国内配分枠を売り切ったからというのが正式説明だが、まあおそらくは、その予定生産量を決めているのはバッテリーの供給量だと踏んで間違いはあるまい。
- 日本のEVの未来を考える(前編)
EVの未来について、真面目に考える記事をそろそろ書くべきだと思う。今の浮ついた「内燃機関は終わりでEVしか生き残れない論」ではないし、「EVのことなんてまだまだ考える必要ない論」でもない。今何が足りないのか? そしてどうすれば日本でEVが普及できるのかという話だ。
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