クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

圧倒的に正しいEV登場池田直渡「週刊モータージャーナル」(2/6 ページ)

» 2021年01月11日 07時00分 公開
[池田直渡ITmedia]

具体的なターゲットに向けた商品開発

 トヨタでは、営業が中心となって、すでに数年前より、200団体を越える企業や公的機関に対し需要の聞き取りを進めるとともに、予約受け付けを固めてきており、これらの団体への納入から着手するため、一般販売の開始は22年が目処となっている。

 例えば電力会社やガス会社に銀行、保険会社や電信電話、オフィス回りのSEなど、企業イメージとしては、カーボンニュートラルに前向きな姿勢を取ってEVを採用したいものの、まさか営業車に300万円オーバーは払えない顧客がたくさんいる。これらの車両は一日に50キロも走らないケースが多く、小量のバッテリーを搭載したEVに向いている。しかもこれらのクルマは定期的に必ず更新需要があり、需要の継続性も見込める。

9.06kWhのリチウムイオン・バッテリーをシート床下に配置して、低床フラットフロアを実現

 冒頭で述べた仕様はすべて、顧客への聞き取りから策定されたものであり、かつ少なくとも今後1年分の生産分はすでに予約が取れている。クルマを出してみたけれど、売れるかどうかはマーケット任せというやり方ではなく、出した分がきっちり売れる仕組み作りができており、戦う前から勝算が掌中にあるという意味で、トヨタのしたたかさが見える。

 ついでにいえば、これでトヨタのEV販売台数のカウンターもバンバン上がるだろう。おそらく21年の国内最量販EVの座はシーポッドが勝ち取ることは間違いない。何しろ予約台数を生産するだけ。しかも、生産の最大の制約条件であり供給がひっ迫しているバッテリーは9.06kWhと小量で済む。「Honda e」 とマツダ「MX-30」のEVモデルが35kWh。日産リーフは40kWhと60kWh。つまり同じバッテリーの供給リソースを確保したら3台から6台は作れる。

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