まだ気になるところがある。図面では内径15メートルのシールドトンネルとなっているけれども、これは現在の技術では最大径だ。このままならば収まるとはいえ、鉄道施設は線路だけではない。30キロ以上の区間では保守用車両や資材を置く場所が最低2カ所必要だ。これがないと夜間保守作業時間が取れない。信号関係の設備や車両に給電するための変電設備も数カ所必要だ。その空間を確保するためには、さらにトンネルを拡大する必要がある。
【構想事例I】では貨物列車の運行本数は維持するとあり、おそらく検討段階で行き違い設備は考慮されていることだろう。しかし、シールドトンネルは部分拡幅には向かない工法だ。
トンネルの長さが短いことも気になる。青函トンネルは海底部と陸上部を合わせて53.85キロだ。「津軽海峡トンネル」は31キロと3割も短い。これは深度を浅くするだけでは実現できない。シールドトンネルは地質の影響を受けにくいから直線的なルートをとれる。しかし、海面下130メートル、海底下30メートル程度の地点を結ぼうとすれば直線にはならない。
これだけの要素を勘案するだけでも、シールドトンネルとするならもっと内径を大きくする技術が必要だし、付帯的な施設も含めると、この見積もりで建設できるかどうか。鉄道に関しては、もう少し鉄道施設や土木に詳しいメンバーに参加してもらったほうが良さそうだ。
鉄道だけでもこれだけ考慮点があるからには、自動運転車を使う道路部分も設計の深度化が必要ではないか。自動運転技術は進化できるか。また、低排出ガス車を前提に換気塔を省略してコストダウンを図ることから、自動運転車は内燃機関ではなく電気自動車を想定しているようだ。ただし、バッテリー駆動車両の場合、勾配区間が長引けばバッテリーの負荷が続き、発熱が大きくなるという問題がある。そのために2.5%勾配区間を短くし、全体的に緩やかにしているのかもしれないが。
一つだけ留意したい点は、開発見込みの技術をアテにしすぎた構想は危うい。これはフリーゲージトレインを見込んで混乱した長崎新幹線や、バッテリー駆動や燃料電池の開発をアテにして失敗した川崎縦貫鉄道(地下鉄)の教訓でもある。
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