「第2青函トンネル」実現の可能性は? “2階建て”構想の深度化に期待杉山淳一の「週刊鉄道経済」(5/5 ページ)

» 2021年01月16日 08時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]
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それでも第2青函トンネルは必要だ

 苦言めいた内容になってしまったけれど、JAPICによれば、今回の発表の趣旨は「第2青函トンネルの必要性と、事業面でも可能性があることを示したい」だ。それは全くその通りで、具体的な設計などはまだ先の話だろう。

 注目したいところは【構想事例I】のうち、「北海道が我が国の食糧政策にとって重要」「新幹線の速度を上げて利用率を高める」という目的。そして、事業方式としての「PFI(Private-Finance-Initiative、民間による公共事業運営)」と「BTO(Build Transfer and Operate、民間建設・公共保有・民間運営)」という枠組み。サービス購入型運営によって公共(国・自治体)が民間事業者にサービス料を支払う仕組みで黒字運営を達成できると示した点にある。

JAPIC案の趣旨は「事業可能性」を示すことにある。「上下分離方式」のような仕組みを作り、トンネルは公共体が保有し、事業者に対して経済効果に見合う「サービス購入料」を支払う。事業者は赤字にならない(出典:JAPIC 今後推進すべきインフラプロジェクト【構想事例I】

 JAPICは17年に『提言! 次世代活性化プロジェクト BEYOND2020』(産経新聞出版)を刊行し、その中で、第2青函トンネルは2本で構成し、内径10メートルの鉄道複線トンネルと、内径9メートルの自動運転車トンネルを示していた。概算事業費は約7500億円だった。20年の「津軽海峡トンネル」の概算事業費は約7200億円となっている。約300億円をコストダウンと見るか。私なら、差額300億円を上乗せしても、トンネル2本で鉄道を複線にした方が良さそうな気もする。

 ともあれ、第2青函トンネルが北海道の活力になり、日本の食糧自給率を高め、国土強靱化につながることは間違いない。さらに深度化を進めて、実現に近づいてほしい。

杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)

乗り鉄。書き鉄。1967年東京都生まれ。年齢=鉄道趣味歴。信州大学経済学部卒。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。出版社アスキーにてPC雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年よりフリーライター。IT・ゲーム系ライターを経て、現在は鉄道分野で活動。鉄旅オブザイヤー選考委員。著書に『(ゲームソフト)A列車で行こうシリーズ公式ガイドブック(KADOKAWA)』『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。(幻冬舎)』『列車ダイヤから鉄道を楽しむ方法(河出書房新社)』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」。


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