第2青函トンネルについては、17年1月1日付の北海道新聞が「津軽海峡に『第2青函トンネル』を 専門家ら構想」として貨物専用トンネル案を試算している。青函トンネル建設に従事した建設業界OB有志「鉄道路線強化検討会」がまとめた試案で、私も取材させていただいた。この構想も単線だったけれども、トンネル内で5カ所、トンネルの本州側、北海道側で1カ所ずつの行き違い設備を考慮していた。総工費3900億円、建設期間は最低15年と具体的だった。(関連記事:青函トンネル建設OBが作った第2青函トンネル「ホンキの見積書」 その内容は)
「津軽海峡トンネル」については、鉄道路線強化検討会の試算も参考にしたという。そこで20年11月の発表の段階で、もう少し詳しい資料をJAPICに請求したところ、11月のシンポジウムで使ったスライド資料をいただいた。その内容は後に公開された【構想事例I】と同じだった。ご覧のように、トンネル断面の図は示されているけれども、トンネル全体の仕様については定まっていない。トンネル概要に鉄道部の行き違い設備は記述されていない。
トンネル概要図を見ると、もう一つ気になった。最大勾配は25パーミルとなっている。25パーミルとは1000分の25、1キロ進むと25メートルの高度差を生じる。道路では%のほうがなじみ深い。25パーミルは2.5%だ。青函トンネルの最大勾配は12パーミルだから、かなり急勾配になっている。JAPICはこの急勾配とトンネルの深度を浅くすることでトンネルの長さを短くし、建設費用を低くできるという。
しかし、貨物列車にとっては厄介な勾配だ。ちなみに鉄道貨物の難所とされる山陽本線瀬野駅〜八本松駅間の通称「セノハチ」の上り線は22.6パーミルの連続勾配で、ここを乗り越えるために補助機関車を連結している。旅客用の電車であれば難なく通過できる勾配だけれども、重量の大きい貨物列車にとっては難所。「津軽海峡トンネル」はそれより勾配がキツいことになる。
「津軽海峡トンネル」の25パーミルは短く、トンネル内部は北海道側が10.6パーミル、青森県側が6.2パーミルとなっている。「青函トンネル」はトンネル中央部のみ3パーミルで、その他の区間は12パーミルに抑えられている。「津軽海峡トンネル」では貨物列車は走行可能だけれども、補助機関車が必要となるだろう。
最急勾配25パーミル(2.5%)は貨物列車には厳しい。バッテリー駆動車の発熱問題も考慮する必要がある。「津軽海峡トンネル」は最小曲線がない、つまり一直線で掘る。つまり、海底の地質の難所を避けられない(出典:JAPIC 今後推進すべきインフラプロジェクト【構想事例I】)
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