現在、青函トンネルの貨物列車の最高速度は時速110キロだ。勾配の上り下りを考慮せず、全区間を最高速度で走ったとしても、「津軽海峡トンネル」31キロの走破に20分程度かかる。つまり、上り列車と下り列車を交互に走らせる場合、1時間あたり約1.5往復しかできない。後述の急勾配を考慮すれば常に時速110キロは厳しい。走破に30分以上はかかる。そうなると、24時間フルに走らせても48本だ。ただし、保守点検の時間をとれば、24時間は不可能といえる。
貨物時刻表(20年3月改正版)によると、現在、青函トンネルを走る貨物列車は24時間で定期列車が上下合わせて38本。臨時列車が上下合わせて13本設定されている。合計51本になるから、48本以下では現在の輸送量を維持できない。
ダイヤを工夫して、交互通行ではなく続行運転してはどうか。例えば下り列車を5分おきに4本連続で走らせて、その後で上り列車を4本連続で走らせる。これなら計算上は35分で片道2本を運行でき、70分で2往復4本の運行が可能だ。ただしこれは計算上の話だ。札幌や青森から続行運転は難しいし、トンネル手前に待機用線路が必要。そして何よりも、荷主の要望に即したダイヤにならない。世の中の物流は青函トンネル中心では回らない。
鉄道の第2青函トンネル構想は、新幹線を高速化するため貨物列車用のトンネルを作ろうという趣旨だったはずで、北海道と本州の物流を活性化させるためのプロジェクトだ。貨物列車を現行より増発できる可能性も担保したいところだ。
北海道新幹線の青函トンネル区間を本来の時速260キロで運行する。北海道の生産物を鉄道貨物で安定的に輸送する。この2つが課題となっている(出典:JAPIC 今後推進すべきインフラプロジェクト【構想事例I】)
北海道新幹線「函館駅乗り入れ」の価値とは? 80億円で実現可能、道内経済に効果
運賃「往復1万円」はアリか? 世界基準で見直す“富士山を登る鉄道”の価値
「終電繰り上げ」は再成長の準備 2021年の鉄道ビジネス、“前向きなチャレンジ”が闇を照らす
こじれる長崎新幹線、実は佐賀県の“言い分”が正しい
北海道新幹線札幌駅「大東案」は本当に建設できるかCopyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング