自動車産業界での半導体需要が高まっているのは、電動化が進む現状を考えれば当然のことだ。従来のガソリン車におけるエンジンの電子制御や、オートエアコンなどの電装品、またADAS(先進運転支援システム)の各装備などに加えて、マイルドハイブリッド以上の電動化が組み込まれることは、インバーターやPCU(パワーコントロールユニット=インバーターとECUなどをまとめた装置)を搭載することを意味する。
直接大きな電流を扱えるパワー半導体を必要とするハイブリッド車やEVにとっては、今回の事態はコロナ禍も関係しているとはいえ、泣きっ面に蜂といった状況だろう。日産が長期的な減産を見込んでいるのは、まさに半導体不足の影響をモロに食らってしまったからだ。
すでに昨年後半には、半導体が供給不足になるという予測が業界アナリストから出されていた。それは5G普及に向けた需要増や、ソニーのプレイステーション5やマイクロソフトのXboxといった家庭用TVゲーム機の生産がいよいよ本格的になるため、半導体の需要が高まることが予測されていたのだ。それに加えてコロナ禍で巣ごもり需要が高まりTVゲーム機の需要はさらに高まったことも、半導体の需要を押し上げている要因の1つだ。
さらにここへ来て、もう1つ半導体需要を押し上げる要因が起こっているようだ。それは仮想通貨の高騰によるPC需要の高まりである。仮想通貨の取り引きを実現するための計算処理であるマイニング用には、CPUではなく、GPU(グラフィックスプロセッサユニット=画像処理用の補助回路用半導体)を使って演算処理させる方が効率的だということから、グラフィックスカードを買い占めるような動きもあり、一気にPC市場の半導体の供給が不足気味となっている。
さらにはコロナ禍によりテレワークの導入が世界中で加速し、PCや通信技術関連の需要も高まった。織り込み済みだった需要増に加えて、イレギュラーな需要が沸き起こり、増産しても供給不足を招いているのである。
とにかく早急に一定以上の数が欲しいマイニング業者は、価格よりも確保する方が優先されるため、価格が上昇してもお構いなしなので、半導体メーカーにとってはありがたい存在だろう。こうなってくると割を食うのが自動車業界、というわけなのである。
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