マイクロソフトやソニーといった電子機器メーカーは、半導体メーカーと直接契約を結び、供給量を確保しているから、納入に対してはかなりの強制力を持っているはずだ。
一方クルマ用の半導体は、半導体メーカーと自動車メーカーが直接契約を結んでいる訳ではなく、ティアー1(自動車メーカーに納入するサプライヤー)以下のサプライヤーが半導体メーカーと契約している。センサーやマイコンを組み込んだ部品をティアー1に納入するティアー2以下のサプライヤーは、厳しいコスト管理を強いられながら半導体を仕入れ、部品に組み込んで納入しているのである。
半導体メーカーにとっても、自動車向け半導体は安定した売り上げは見込めるものの、利益面ではあまり貢献していないということもあり、スマートフォン向けや、より利益率の高いゲーム機や高性能PC向けの半導体に軸足を置きつつあるようだ。
しかも、コロナ禍による生産停止のあおりを受けて、本来の売り上げが見込めなくなったとすれば、自動車メーカーをアテにはできないという意識が半導体メーカーに生じても無理はない。しかもTVゲーム機やグラフィックスカードの需要は旺盛で、はるかに利益率が高いとあれば、そちらを優先したいという姿勢にもなってくるだろう。
ジャストインタイム方式で在庫負担を無くし、生産効率を高めてきた自動車メーカーにとっては、サプライヤーは注文通りの納期で必要量を納入してくれるのが前提であり、購買担当者の中にはそれが当たり前だと思い込んでいた人もいるのではないだろうか。しかし、サプライヤーを通じて半導体メーカーのしたたかな戦略を知って、これまでのやり方が通用しないことを実感したことだろう。
こうした半導体メーカーの意向は、実はメーカー自身だけで決まっていくものではない。というのも半導体業界には表舞台に立つメーカーだけでなく、裏方の存在が極めて大きいからだ。
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