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なぜ「嘘ついて出社」? 数字に縛られる管理職を変える“リモート時代のマネジメント”河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(4/4 ページ)

» 2021年01月22日 07時00分 公開
[河合薫ITmedia]
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感情を共有する「つながり」投資が不可欠

 繰り返しますが、自律性とは「自分の行動や考え方を自己決定できる」感覚のこと。その「自律」を高めるには、つながりへの投資が必要なのです。トップは、「会社と社員」「上司と部下」「社員と社員」がつながるにはどうしたらいいかを考え、マネジャーも知恵をしぼり実行しなくてはダメ。

 ある企業では、リモート勤務で失われる「ちょっとこれどうなってる?」「ちょっと昨日の顧客の情報ある?」「すみません、ちょっとこれ、分からないんですけど」といった“ちょっとちょっとトーク”が可能なアプリを開発していました。知恵をしぼり、同じ部署のメンバーが共有できる仮想空間を作ったのです。

 また、あるマネジャーさんは「部下たちと感情を共有」する時間を1日に1回作っていました。「こないだ見た映画で、ほにゃららで……」などと感動を共有したり、「ついついリモートだと、テレビつけちゃって、ドラマ見ちゃうんだよなぁ」などと失敗を共有したりと、あえて「無駄な時間」「無駄な会話」を大切にしていました。

リモートでもちょっとしたことを話したり感情を共有したりする仕組みが重要(写真提供:ゲッティイメージズ)

 「共に居る」ことで、私たちは何百、何千という情報交換をしていて、特に感情の共有は人がつながるうえで極めて大切な“交換”です。

 こういったつながりへの投資は、確実に「信頼」を生みます。ここでの信頼とは、「相手(部下)に課せられた責任を果たすことへの期待」です。

 自律性が求められるリモートでは、フェースtoフェース以上に、信頼が安心感をもたらし、「よし、やるぞ!」とモチベーションを喚起させます。

 信頼の上に信頼は生まれるのです。

河合薫氏のプロフィール:

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 東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。その後、東京大学大学院医学系研究科に進学し、現在に至る。

 研究テーマは「人の働き方は環境がつくる」。フィールドワークとして600人超のビジネスマンをインタビュー。著書に『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアシリーズ)など。近著は『残念な職場 53の研究が明かすヤバい真実』(PHP新書)、『面倒くさい女たち』(中公新書ラクレ)、『他人の足を引っぱる男たち』(日経プレミアシリーズ)、『定年後からの孤独入門』(SB新書)、『コロナショックと昭和おじさん社会』(日経プレミアシリーズ)がある。


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