つい最近まで世を騒がせていたニトリとDCMホールディングスの島忠争奪戦は、首都圏内側の優良マーケットを巡って、外側の強者が買収合戦をするといった構図だったといえるのだが、小売の世界では今後も同様の争奪戦は散発すると思われる。外の強者が内側の肥沃なマーケットをどう再分割するか、というのが小売業界での一般論だということだ。そこに先んじて、オーケーは鬼の居ぬ間に、肥沃な場所に牙城を築きつつあるといえる。もう10年もすれば、外側のライバルの参入が難しくなるほどに巨大化しているかもしれない。
ちなみに島忠争奪戦に関していえば、オーケーが全く関係ないわけでもない。知る人ぞ知る、なのだが、オーケーと島忠は内側の企業同士ということもあって共同出店や隣地に出店している店がかなり多いのである。島忠の中でも家具を品ぞろえしている「Home's(ホームズ)」という大きめの店舗が首都圏には30ほどあるのだが、そのうち10店舗ほどはオーケーが共同出店、もしくは隣地にいるという関係だ。
見方によっては、島忠の集客力をオーケーがかなり支えているといっても過言ではないだろう。今後、島忠を子会社化したニトリは、オーケーの集客力を間近で目にすることになる。これから、首都圏内側攻略を本格化するニトリとオーケー、面白い強者連合の関係が生まれるかもしれない。
中井彰人(なかい あきひと)
メガバンク調査部門の流通アナリストとして12年、現在は中小企業診断士として独立。地域流通「愛」を貫き、全国各地への出張の日々を経て、モータリゼーションと業態盛衰の関連性に注目した独自の流通理論に到達。
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