業績好調のアイリスオーヤマ マスクで見せた「一点突破全面展開」と「時流適応経営」の秘密コロナ禍をチャンスに(5/6 ページ)

» 2021年01月29日 05時00分 公開
[岩崎剛幸ITmedia]

伸びる鉄則その3「徹底したチャネル開発力」

 アイリスオーヤマは、今やマスクの一大製造メーカーでもあります。20年夏、製造業の国内回帰を支援する補助金などを活用して家庭用マスクの国内一貫生産体制を整えました。中国工場2拠点とあわせて毎月2億3000万枚の家庭用マスクを供給できるようになっています。この数字は最大手のユニ・チャームに匹敵する数字です。さらに今後は医療用マスク「N95」を宮城県内で生産して供給する予定です。今秋立ち上がる予定の除菌ウェットティッシュ生産も含めて、感染予防対策という日用品カテゴリーにおいても一気に知名度を上げつつあります。

 しかし、このマスク製造は単に感染対策商品としてもうけようという意図ではないことが分かりました。実は、マスク販売を機に新たなチャネル開拓につなげているのです。

 それが、スーパーマーケット(SM)チャネルです。実は、同社は問屋を介さないメーカー直販の物流システムを敷いているため、問屋を間に挟むことが多いSMチャネルを攻めあぐねていました。

マスクでSMチャネルを開拓

 しかし、20年のマスク不足によって同社のマスク生産が本格化。品薄で困っていたSMは相次いで同社のマスクを取り扱うようになりました。その際、同社では他の商品も提案し、徐々に取り扱い商品が広がり、SM内でのアイリスシェアが上がったのです。結果的に全国のSMチャネルが開拓できたため、前述の生活用品その他の売り上げを大きく伸ばしました。

 これを小売りマーケティングの世界では「一点突破全面展開」と呼びます。低単価の商品で間口を開けて、一気に攻め込んでいくというやり方です。この一点突破商品を何にするかが非常に重要です。できれば他がやっていないような商品や、手に入りにくい商品が適しています。今回はマスクがまさにこれに該当したことで、同社のチャネル拡大ストーリーを加速させることにつながりました。このような“機を見るに敏”な同社の戦略が、時流をとらえたのです。

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