日本が「世界の下請け工場」になる日――2021年、「曲がり角」に立つ2つの産業とは?24時間営業、垂直統合をどう変える(2/4 ページ)

» 2021年01月29日 05時00分 公開
[大関暁夫ITmedia]

各チェーンが直面する「2020年代問題」

 各チェーンは公取ににらまれたくはないものの、生命線ともいえる24時間営業についてはできればやめたくはない、というのが本音ではないでしょうか。その証拠として、各チェーンとも公取委が正式コメントを発表した後、反旗を翻していたオーナーを中心とした非24時間営業を認めながらも、全店には広げずあくまで「例外」扱いにとどめています。

 一方で、各チェーンが「対公取委」とは別に大いに気になっていることとして、この先5年でコンビニ契約の約3割が契約更新時期を迎えるという「2020年代問題」があります。つまり、24時間営業店舗は減らしたくはないが、フランチャイズ店舗も減らしたくない――とのジレンマから、オーナーサイドにある程度歩み寄らざるを得ないという状況に追い込まれているともいえます。

 そんな状況下で少しずつ動き出した各チェーンの対応策をみると、姿勢の違いが出始めていることが分かります。

大きく2つに分かれた24時間営業への対応

 ファミリーマートは、非24時間営業の希望を取って、約1割の店舗で深夜営業の休止も認めました。また店舗独自で日配品の値引き販売を認めることも発表しました。ミニストップは、加盟店との利益配分の見直しを行い、本部と加盟店で利益を折半にすると発表。これはかなり大幅な譲歩だといえます。この両社を業界内の規模の大小ではなく、顧客誘引力やオーナー引き止め力につながるブランド力で分析すると、セブン‐イレブンやローソンには及ばない業界3〜4番手の印象は否めず、やはりフランチャイズ契約継続確保を優先した対応方針を打ち出し始めたといえるかもしれません。

 片や業界リーダーのセブン‐イレブンは、店舗特性に合わせた品ぞろえやオーナーの経費負担の一部減免などを発表するも、24時間営業や値引き販売への新たな対応はないようです。ローソンに至っては、オーナーとの契約内容の見直しに関連してこれといった動きはほとんどなく、無印良品との全面提携など「ローソンにしかないものを増やす」という差別化で危機を乗り切る姿勢を見せています。この2社は現時点において、あくまで本来のビジネスモデルをブラッシュアップしつついかに維持するかにこだわっているようにも見え、対応は二極化の様相を呈しています。

出所:ゲッティイメージズ

 公取委の調査では、ここ5年でコンビニオーナーの平均年収は190万円も減っており、加えて約2割は債務超過状態にあるといいます。この問題を解決しないことには、コンビニビジネスの将来はないといっていいでしょう。ブランド力の上位2社と下位2社、どちらの方針が老朽化した昭和のコンビニビジネスを次なるステージに押し上げることができるのか。21年はまさしく正念場を迎えるとみています。

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