飲食店の多くは苦戦しているのに、なぜキッチンカーは“右肩上がり”なのか水曜インタビュー劇場(アツアツ公演)(3/6 ページ)

» 2021年02月03日 08時00分 公開
[土肥義則ITmedia]

マンションの敷地で勝負

向: 日本人の人口が減っているのに、飲食店の店舗数はそれほど減っていません。むしろ、どんどん競争は厳しくなっていますよね。では、20年後、30年後はどうなるのか。人口はどんどん減っていくなかで、不動産価値はそれほど下がらない。ということは「売り上げは下がるけれど、家賃は下がらない」といった事態になる。

 こうした動きがコロナによって、加速したのではないでしょうか。売り上げが激減したことによって、家賃の支払いに苦しむ。しかし、値下げ交渉は難しい。そんな状況に陥った飲食店は、「1店舗の収益を高めなければいけない」と考え、テークアウトを始めたり、デリバリーを試したり。でもこの2つを始めても、コロナ前の収益を確保することは難しかったのかもしれません。

収益確保のために、キッチンカーに参入する業者が増えている(画像と本文は関係ありません)

土肥: 新たな収益源を確保するために、キッチンカーを始めたところが増えてきたわけでしょうか?

向: はい。

土肥: その流れは理解できるのですが、疑問が一つ。登録数が1000店を超えているのに対し、出店している場所は300カ所ほど。しかも以前のようにオフィス街でもうけることが難しい状況を考えると、小さな市場をたくさんの人たちが奪い合っている構図になりますよね。

向: ご指摘のとおり、テレワークの導入などでオフィス街から人が少なくなりました。では、そこで働いていた人たちはどこにいったのか。消えたわけではなく、自宅にいる。じゃあ、マンションの敷地などで展開すれば需要があるのではないかと考え、住宅地での営業を始めることにしました。結果、売り上げが伸びているんですよね。

住宅地で営業したところ、予想以上に売れている

土肥: コロナ前、マンションなどでも営業をしていたのでしょうか?

向: いえ、ほとんどなかったです。ご存じのとおり、マンションには自治会があって、住民の意見をまとめなければいけません。という事情があって、敷地内でキッチンカーを営業することは難しかったんですよね。しかし、緊急事態宣言が発出されて、外出することが難しくなりました。外食を楽しみたいけれど、控えなければいけない。コンビニ弁当ばかりだと飽きてしまう、デリバリーは手数料などが高い。そんな不満を感じている人にとって、ちょっと歩いてアツアツのお弁当を購入できる点がウケたのかもしれません。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.