横浜市の「EVバス」実証実験が、路線バスの将来像に大きな影響を与えそうな理由FCバスも(3/4 ページ)

» 2021年02月05日 05時00分 公開
[岸田法眼ITmedia]

EVバス普及の課題

 EVバスの普及に向けた課題もいくつかある。私はバスの知識がなく、見識で述べさせていただく。

(1)急速充電は営業所だけでは足りない

 九州産交の「よかエコバス号」実証試験時、営業所や終点の停留所で急速充電が1日3回、約40キロ走行を目安に実施された。

 松田シニア准教授によると、「よかエコバス号」の航続距離は90キロまで対応できるという。おそらく、空調装置の使用、ブレーキに使用する回生電力、リチウムイオン電池の劣化などを勘案し、余裕のあるうちに急速充電したものと考えられる。

 都市の路線バスの多くは、営業所を出庫してから入庫まで、1〜2時間が多く、約40キロ走行を目安に急速充電するのはマトを得ていると思う。

 しかし、都市以外の路線バスは、営業所の出庫から入庫まで長時間を要することも。以前、あるバスの運転席の行路表をチラッと見ると、乗務6時間であった。航続距離が90キロのままでは、営業所以外でも急速充電施設が必要だ。

 例えば、朝日バスの関宿中央ターミナル(千葉県野田市)は、路線バス用の駐車場が整備されており、終点到着後、乗務員は次の運用まで休憩できる。都市も含め、駐車施設のあるバスターミナルにも急速充電設備が必要不可欠である。

関宿中央ターミナルは、乗務員の休憩所も兼ねている。

(2)高速バス、観光バスの実用化

 路線バスよりも長距離を走る高速バス、観光バスの実用化も求められる。航続距離を500キロ程度まで引き上げないと、実用化が難しいのではないだろうか。また、急速充電設備も高速道路のインターチェンジ、サービスエリア、パーキングエリアに整備することが必須である。

(3)非常事態の対応

 先日、関越自動車道、北陸自動車道で、大雪が影響し、無数の自動車が立往生する事態に見舞われた。救助に向かった自衛隊はガソリンを持参し、希望者に給油していた。今後、EV車対応の急速充電携帯端末の開発も必要になるだろう。

(4)電力はどうやって作るのか

 もっとも肝心なのは、急増が見込まれる電力をどうやって生み出すかだ。発電所頼みにすると、電力使用量が逼迫(ひっぱく)する事態も想定しなければならない。ここはソーラーパネルの設置など、自家発電で賄うのが理想だと思う。

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