横浜市の「EVバス」実証実験が、路線バスの将来像に大きな影響を与えそうな理由FCバスも(2/4 ページ)

» 2021年02月05日 05時00分 公開
[岸田法眼ITmedia]

日産自動車リーフの技術を活用

 EVバスはすでに実用化されているが、高コストが難点で、普及には至っていない。産学官プロジェクトの中心人物、熊本大学大学院先端科学研究部の松田俊郎シニア准教授(以前、日産自動車に勤務していた)によると、日野自動車のポンチョのEVバスは1台8000万円だという。対し、一般的な路線バスタイプのディーゼルバスは1台3000万円で、EVバスの割高感が否めない。

 そこで、熊本大学をはじめとする産学官プロジェクトが、バスやトラックなどの大型自動車向けの低コストEV車を開発し、自動車会社を横断した生産体制で普及させるべく、16年度から開発及び設計に入る。

式典では、日産自動車のリーフも展示された。

 低価格で実用的なEVバス開発のヒントになったのは、日産自動車のリーフだ。本格的なEV乗用車として発売されると、50万台売れたという。その技術を活用し、大型車用にアレンジすることで低価格化を実現。さらにディーゼルエンジンの既存車もEVバスに改造することができる。

 こうして九州産交バスの車両1台をEVバス実証試験車「よかエコバス号」に改造し、2018年2月から1年間にわたり、熊本市近郊路線1万6582キロを走行した。結果は良好ながら、CO2削減がディーゼルバスに比べ、30%にとどまるなどの課題もあった。

 今回、横浜市で実証試験することになったのは、大都市なので利用客が多い、渋滞や発進停止の回数が多い、急な坂道が多いことなどが決め手となった。上記はEVバスの弱点だという。実証試験の結果を基に、克服する道筋を立てるものと推察する。

 車両も既存のディーゼルバス1台をEVバスに改造した。市営バスを運行する横浜市交通局によると、改造費用は1000万円超だという。

 実証試験は2020年10月28日〜2021年2月中旬まで。市営バス26・34・36・59・87系統で運行される。

 式典終了後に試乗(横浜市役所の周辺を1周)すると、運転士がアクセルやブレーキを軽く踏んだだけでも滑らかな加速と減速、ウインカーの音が際立つほど走行音も静か。走り心地や乗り心地もFCバスと変わりないほど快適だ。

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