鉄道模型は「走らせる」に商機 好調なプラモデル市場、新たに生まれた“レジャー需要”杉山淳一の「週刊鉄道経済」(2/4 ページ)

» 2021年02月05日 07時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

単価高めの「鉄道模型」も堅調、「無動力キット」に活路

 こうしたホビー市場の影響は鉄道模型も受けているだろう。しかし、もともと趣味層が限定され、車両模型の単価もNゲージフル編成で1万円超えという価格帯だから、初心者の増減とは無縁の手堅いビジネスかもしれない。

 主にNゲージ(軌間9ミリ、1/150〜1/160スケール)を手掛ける関水金属(ブランド名はKATO)は、公式サイトによると年商が55.5億円だ。2011年の東京商工会議所の資料によると、売上高は約40.8億円だから、この10年間で約10億円の増加となる。

 NゲージでKATOと並ぶ人気のトミーテック(ブランド名はTOMIX)は、20年3月期の決算で純利益約1.7億円。総資産48.1億円。トミーテックの公式サイトにある「トミーテックはタカラトミーグループで唯一、国内工場での生産ラインを持つメーカーです」が興味深い。高額商品がきちんと売れているからできること。これはコンピュータ分野の日本HPが20年以上も「東京生産」にこだわる理由に通じる。オンデマンドで多品種展開するなら、日本で作った方が高品質低コストとなる(参考:日本HP)。

 鉄道模型には、博物館のジオラマでおなじみのHOゲージ(軌間16.5ミリ、1/80〜1/82スケール)がある。Nゲージより一回り大きく、機関車1台で数万円〜数十万円の世界となる。真ちゅうあるいはダイカスト製の重厚感。プラスチック製であっても若干安い程度。景気に左右されない富裕層向け、まさにキングオブホビー。ただし、悩みどころは顧客の高齢化だろうか。

 特筆すべきは老舗ブランドの天賞堂がプラスチック成形のエントリーブランド「T-Evolution」を始めた。車両1両あたり約5000円。ただしモーターは付いていない「飾り用」だ。動力化するためにはオプションのモーターキットなどを別途購入し組み付ける。それでも1台1万円以内で済む。

天賞堂「T-Evolution」シリーズ。モータは別売り。パンタグラフもプラスチック製で見栄え重視の場合は別売りの金属製に交換

 無動力キットの先鞭はNゲージが打った。トミーテックの「鉄道コレクション」シリーズだ。最初の製品群は1台400円という衝撃的な値付けで、現在は1000〜1500円で展開する。このほか、他の鉄道会社とコラボした少数生産品もある。こちらは少しお高いけれども、ちゃんと欲しい人の心に刺さって売れている。何を隠そう、私も自分の鉄道趣味のきっかけとなった東急電鉄旧3000系を買いに行った。若い友達と早朝から並んで。

 「鉄道コレクション」も飾り用だけど、トミーテックから動力化キットが販売されており走行可能にできる。この「低価格」あるいは少数生産の「無動力キット」は、鉄道趣味を拡大するために効果があると思う。そして「動力化キット」の存在にも注目だ。飾りをわざわざ走らせたい。なぜなら、走らせる場所があるからだ。自宅ではなく、走らせるための店に行く。「レンタルレイアウト」と呼ばれている。

トミーテックの「鉄道コレクション」シリーズ「東急電鉄3450形(旧3000系)」。企画販売は総合車両製作所(旧東急車輌横浜事業所)

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