鉄道模型は「走らせる」に商機 好調なプラモデル市場、新たに生まれた“レジャー需要”杉山淳一の「週刊鉄道経済」(3/4 ページ)

» 2021年02月05日 07時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

鉄道模型を「走らせる」サービスへ展開

 鉄道模型ファンには主に車両派とレイアウト(ジオラマ)派がいる。車両好きは既製品を買ったり、それを改造したり、自作したりする。車両派の頂点は元コクヨ取締役の原信太郎氏。2014年に没するまでに数千両の車両を収集、自作した。12年にその一部を使って横浜に原鉄道模型博物館が作られた。

原信太郎氏のコレクション(原鉄道模型博物館)

 レイアウト派は自宅で楽しむ人が多く著名人は少ない。海外ではロックスターのロッド・スチュワート氏が公式Twitterで公開している。日本マイクロソフト初代社長の古川享氏は米国の自宅に大規模なレイアウトを保有していたけれど、日本への転居を機会に解体し、一部を保存しているという。一部といってもISOコンテナ単位で保管というからすごい。

 鉄道模型のレイアウトを作るには設置場所が必要だ。鉄道博物館をみれば分かるように、実物と同じ長編成の電車を走らせるには体育館ほどの広さが必要で、家庭でもHOゲージであれば6畳以上のジオラマ部屋が欲しくなる。この趣味は不動産問題がついて回る。そこで日本で普及したサイズがNゲージだ。畳1畳で風景を再現できる。いずれにしても、鉄道模型は主に自宅で楽しむ趣味だった。最近ではZゲージ(軌間6.5ミリ、1/220スケール)も登場しているけれど、小さすぎて車両価格がNゲージより高くなってしまった。

 鉄道模型を走らせたい。しかし自宅では不可能。そこで仲間同士が集まり、公民館の会議室を借りて線路を敷いて走らせる「運転会」が行われていた。これは車両派の集まりで、ジオラマ派はモジュールレイアウトといって、規格化されたサイズで風景を作り、連結して楽しむ。これで風景作りと車両の走行を共に楽しめる。

 それを商機として「レンタルレイアウト」という業態が生まれた。広い部屋に常設のレイアウトを設置し、複数の路線を張り巡らせて、路線ごとに時間貸しを行うというビジネスだ。料金は1時間あたり数百円から1000円で、自分の車両を持ち込んで走らせることができる。始まりは鉄道模型専門店「ポポンデッタ」のように、店内にレイアウトを設置して貸し出すようなスタイルや、ジオラマを設置する飲食店だった。その後、飲食を主とせず、広大な部屋にレイアウトを設置する業態が現れている。

レンタルレイアウトに持ち込んで、長編成のコレクションを走らせる

 例えば、神奈川県最大級というレンタルレイアウト店は約39坪の店で12路線を用意する。1路線1人として、1時間あたり12人、つまり1人あたり3坪だから密にならない。12路線分の費用を負担すれば貸し切りもできる。若干の割引をしてくれるようだ。ペンションや旅館に併設し、宿泊してじっくり楽しめるレイアウトもある。群馬県嬬恋村の「嬬恋鐵の郷」は4路線のレンタルレイアウト付きのログハウスがある。

レンタルレイアウト付きリゾート「嬬恋鐵の郷」。HOゲージのレンタルレイアウトは珍しい(出典:「嬬恋鐵の郷」Webサイト

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