このJAM Wrapを実現したシステムであるスマートプラスの「Digital Wealth Manager」は、同社のクラウド証券システム基盤「BaaS(Brokerage as a Service)」上の新サービスだ。BaaSは証券システムに必要な顧客管理、入出金、証券売買などの機能を、クラウド上のSaaS機能として提供するもの。クレディセゾンが、会員向けに積立投資可能なサービス「セゾンポケット」のシステムとして採用している。
「Digital Wealth Manager」は、積立投資にも対応したロボアドバイザーサービスとして当初発表された。ただし、自動のアルゴリズム運用のほかに、担当者による運用にも対応する。「もともと想定ユースケースは、人が入って運用するという話と、非金融事業者が自動で運用する両方を考えていた」と、スマートプラスの親会社Finatextホールディングスの林良太社長は話す。
従来の一社専用に作られたシステムとは違い、複数社で共通した業務フローをSaaSとして提供することでコストを下げた。
「業務フローを共通化して、コストをぐっと下げる。早く安く柔軟にサービスを提供できる。そうした業務フローの設計が付加価値だ。1兆円、10兆円に耐えられるような業務フロー設計をしている」(林氏)
証券会社や銀行などが自社専用に証券システムを作る時代から、裏側のシステムはスマートプラスのような専業プラットフォーム提供者が用意し、フロントの企業はUIや顧客接点に集中する時代が近づいてきている。特に、顧客基盤を持つ非金融事業者にとっては、この分業体制が魅力的だ。
プラットフォームを提供するスタートアップも動き出してきた。既に実績のあるスマートプラスだけでなく、これまでロボアドサービスをメインとしてきたFOLIOも、金融機関向けのロボアド・ラップ運用の基盤システム「4RAP」を発表した。また、日本資産運用基盤もQUICKと組んで投資一任契約のプラットフォーム開発を進めている。
「投資一任契約のプラットフォームはどんどん出てきたらいいと思う。倒すべきなのは、既存の重くて使いにくいシステム。今はマーケットを広げていくタイミングだ」と林氏。スマートプラスの基盤は、株式だけでなく保険にも対応しており、1つのアカウントで両方に対応したいというニーズにも応えていける。
こうした水平分業の動きは、Embedded Finance(プラグイン金融)やModular Finance(モジュール金融)と呼ばれる。金融サービスには、顧客接点と、ライセンス、システム基盤の3つが必要だが、それらを分離して、サービス化する動きだ。金融機関のみならず、小売や交通、ヘルスケアなどの顧客接点を持つ非金融企業が、モジュールを組み込んだり、サービスをプラグインしたりといった形で金融サービスを提供できるようになる。
フィンテックの中でも新しい流れで、国内でも2021年には多くの利用例が登場すると目されている。
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