クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向
連載
» 2021年02月22日 07時00分 公開

「DS3 クロスバック E-TENSE」 100年に渡る物語が導いたEV池田直渡「週刊モータージャーナル」(3/6 ページ)

[池田直渡,ITmedia]

DSがフランス人の誇りであるために

 いよいよ本格化を迎えた、CASEの時代を生き残るための膨大な研究費や、コネクティッドによる膨大な情報収集とその分析から広がるビジネスを手中に収めようと思えば、地域を飛び越えた幅広い連携がマストになってくる。新生ステランティスの狙いはまさにそこにある。

 さて、本稿は、米欧2地域にまたがる世界第6位の自動車メーカーが誕生するのに至った歴史的背景の興味深さをひも解くと同時に、この度日本への上陸を果たしたPSAのフラッグシップブランド「DS」のEV、DS3クロスバック「E-TENSE」の立ち位置を解説しようという目論見で書かれている。

 すでに何度か書いているが(記事参照)、DSというブランドは、PSAにとってフラッグシップブランドであるだけでなく、自動車生産国フランスにとって悲願というべき、大統領が胸を張って乗れる高級車の復活こそがその目的である。

 しかしながら、これまでPSAには、その車格を満たすランニングコンポーネントが無かった。今回ステランティスの発足で、例えばマセラティのGT系シャシーが使えるとすれば、フランス人の悲願に一歩近づくことができる。という意味で、このアライアンスはDSにとってこそとても意義深いものになり得るのだ。

 さて、そのラインアップにおいて、DS3クロスバックは、Bセグメントのプレミアムという特殊な位置づけで、要するに小さい高級車である(記事参照)。プジョーブランドの208とコンポーネントを共有しつつ、意図的に100万円もの価格差を与え、価格分の明確な違いを打ち出すために、傾いたデザインに振り切ってその特異な個性を確立している。大事なのはDSが「普通ではなく見えること」である。

 という素地があった上に、EVモデルとしてE-TENSEが加わった。現在のグローバルな自動車マーケットを見ると、コンベンショナルな内燃機関を持つグレードとEVモデルにどうやって納得いく差分を与えるかが大きな課題になっている。プジョーとDSの間に存在する大きな付加価値の差と近似の形が、ガソリン車とEVの間に見られる。

 それは車種の中で「一番良いグレード」がEVであり、それ以外は格下という序列の発想だ。現状では、否が応でも高価格なバッテリーによって、価格差は大きくなる。その差額を顧客に納得させなくてはならない。だからいかにもEVらしい青系統の加飾をあちこちに与えたり、顔つきにサイバー感を演出するデザイン変更を加えたりして、トップグレードであることをアピールしなくてはならない。

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