「洋服の青山」、400人希望退職の衝撃! 窮地のスーツ業界が生き残るには小売・流通アナリストの視点(4/4 ページ)

» 2021年02月26日 05時00分 公開
[中井彰人ITmedia]
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他業種をうまく取り込んだ業務スーパー

 神戸物産が運営する業務スーパーは、小規模、零細飲食店の業務用仕入需要に対応するスーパーというコンセプトながら、実態は地元住民のディスカウントストア需要を取り込んで成長している。基本的にFCチェーンとして構成されており、主に地方の家電量販店、ホームセンター、食品スーパーなどが不採算店を転換する形で加盟している。コロナ禍の今、これらの業態は巣ごもり需要の追い風で、不採算店はあまり出ないかもしれないが、紳士服も含めて不採算店の大量発生が見込まれる、外食業の中からの転換組も加盟店に加わることになるのかもしれない。

 コロナ禍という天災に見舞われたことで、さまざまな業種、業態で多くの閉店が発生することになるかもしれないが、それは単なる悲劇で終わるとは限らない。歴史にならうなら、こうした事態をチャンスとして、不採算店の受け皿となって成長する企業もあるだろうし、新事業を立ち上げたり、事業内容自体を変えて生き残る組織も多いはずだ。

 ウィズコロナは急激かつ一過性の環境変化であるため、これに完全対応しても、何年かすればもうゲームチェンジしている可能性もある。しかし、スーツ需要の急減は既定路線の前倒しであり、紳士服チェーンのスーツ脱却への対応は、決して損にはならないだろう。素早くシェアオフィス事業を準備したAOKIや青山商事は、数年後にはシェアオフィス業界の大手といわれる存在になっているかもしれない。

 コロナ禍でひどい目にあっている組織は多々あろうが、これからはアフターコロナに向けた布石について、各社が必死の生き残り策を発表することだろう。2月は多くの小売関連企業の決算月であるのだが、4月以降の決算説明で明らかになる新たな挑戦的施策に大いに期待したい。

著者プロフィール

中井彰人(なかい あきひと)

メガバンク調査部門の流通アナリストとして12年、現在は中小企業診断士として独立。地域流通「愛」を貫き、全国各地への出張の日々を経て、モータリゼーションと業態盛衰の関連性に注目した独自の流通理論に到達。


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