パナの高級トースター「ビストロ」は、なぜ2倍ペースで売れているのか水曜インタビュー劇場(アツアツ公演)(3/5 ページ)

» 2021年03月10日 08時00分 公開
[土肥義則ITmedia]

利用者の課題を解決

内田: 冷凍厚切りトーストを使って、実験しました。近赤外線ヒーターを搭載していない一般的なトースターの場合、焼き上がり内部の温度は33.6度に対し、ビストロは76.4度。

土肥: 2倍以上。

中まであつあつの実証結果(冷凍厚切りトースト)

内田: あと、インテリジェント制御という機能を搭載していまして、パンの厚み、パンの温度、庫内温度などに応じて、最適な形で焼き上げることができるようになりました。そのプラグラムは、7200通りあるんですよね。

土肥: 毎日、違うプログラムを使ったとして、20年近くかかるわけですね。先ほど「冷凍厚切りトーストを使って実験……」と話されていましたが、なぜ冷凍パンで実験を行ったのでしょうか?

内田: 消費者はどんな形でトーストを食べているのか。2020年8月に調査したところ、「4枚切り」(27%)や「5枚切り」(24%)など、約5割が厚切りを食べている。また、約7割がパンを冷凍保存していて、そのうち約6割の人は月1〜3回冷凍している。このデータから、パンをまとめ買いして冷凍している人が増えてきているのではないかと仮説を立てました。

 ただ、冷凍パンを焼くことは難しいようで、約8割の人が失敗しているんですよね。中まで焼くと外が焦げてしまったり、ちょうどよい焼き色だと中は生焼けだったり。

昨今のパン事情(パナソニック調査)

土肥: 利用者のそうした課題を解決するために、機能面にこだわったわけですね。ちょっと気になったのは、1999年に発売した「NB-G100」から機能面は何度もマイナーチェンジを行っていますよね。少しずつ性能はよくなっているようですが、20年以上経って、なぜこのタイミングでフルモデルチェンジすることにしたのでしょうか。従来機と見た目がまったく違う。

内田: ご指摘の通り、NB-G100のモデルからマイナーチェンジを繰り返してきました。購入者の評価は高くて、ECサイトのコメントを見ても、「使いやすい」「購入して正解だった」といった評価が多いのですが、購入前の声はちょっと違うんですよね。他社の高級トースターを見て、「おいしく焼けそうだ」「オシャレでカッコイイ」といった声が多い。

 購入後の満足度は高いものの、購入前のタイミングでお客さまの心に響いていない。開発メンバーとしては「いい商品をつくっているので、使っていただきたい」という思いは強いのですが、それがうまく伝わっていないのであれば、「生まれ変わる必要があるのではないか」と考えました。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.