パナの高級トースター「ビストロ」は、なぜ2倍ペースで売れているのか水曜インタビュー劇場(アツアツ公演)(4/5 ページ)

» 2021年03月10日 08時00分 公開
[土肥義則ITmedia]

知らない人をターゲットに

土肥: 商品のことを知っている人は買う、知らない人は買わないということですね。その知らない人をターゲットに開発が進んだわけですか?

内田: はい。他社の商品を分析したところ、マーケティングや商品の見せ方、開発背景などをうまく表現しているなあと感じました。また、デザインはシンプルで美しいモノが多い。一方、当社の商品はどうか。従来機は「トースト」「ピザ」などと書かれたボタンがあって、それを押すだけでよかったので簡便性はあるのですが、デザインを見ると「うーん」となってしまう。

 では、デザインをどのように変更すればいいのか、社内外で何度も議論しました。パンを焼いているシーンをイメージするには、どうすればいいのか。キッチンに置いて「いいなあ」と感じるのは、どんなデザインなのか。形や色は、どうすればいいのか。こうした議論を重ねていく中で、「ボタンを取る」という話になりました。

従来機の「NB-DT52」、前面にボタンがたくさん並んでいる

土肥: ボタンを取ることに、抵抗勢力は出てこなかったですか?

内田: 「このデザインでいきましょう」と伝えても、従来のトースター開発に長く携わってきた人にとっては、ちょっと寂しい気持ちがあったのかもしれません。お客さまも長く使われているので、「残したほうがいいのでは?」といった声もあったのですが、徹底的に研ぎ澄ます方針を掲げて、シンプルなデザインに落ち着きました。

 デザインを変えるということは、実は大変な作業がありまして。前面をガラスにしたわけですが、一体感を出すために継ぎ目をなくしました。また、ハンドルは細いモノを使うことに。当初、強度の問題で予定していたモノを使うことはできなかったのですが、他の商品からの知見を集めて、いまの細い形状を採用しました。さらに、デザインを変えたことで、機能性や安全性に問題が出てはいけません。そうした問題を一つひとつクリアして、商品を完成させることができました。

7200のプログラムで焼くことができる

土肥: そんなこんなで今のデザインに落ち着いたわけですね。2月に発売して、前年比2倍ペースで売れてるということですが、以前であれば「バルミューダにしようかな、それともアラジンかな」といった会話をしている消費者の選択肢の中に、なかなか入ることができなかったのに、いまでは「いや、パナソニックのコレでしょ」といった人がじわじわ増えてきたということでしょうか?

内田: だと思います。

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