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働く母に起きた“事件”──誤解だらけの「選択的夫婦別姓」と「家族の一体感」という呪い河合薫の「社会を阻む“ジジイの壁”」(1/4 ページ)

» 2021年03月12日 07時00分 公開
[河合薫ITmedia]

 「選択的夫婦別姓」が今までとは異なるカタチで注目を浴びています。

 きっかけは、“通称”丸川珠代氏が日本政府の五輪・男女共同参画担当相になったこと。1月30日に自民党国会議員が連名で、「夫婦別姓に賛同する意見書を採択しないよう求める文書」を埼玉県議会などの地方議会に送り、丸川大臣はその文書に名前を連ねていました。この件はすでにメディアやSNSで報じられていたので、ご存じの方も多いことでしょう。

 この問題は英BBCが「Japan gender equality minister opposes change on separate spouse surnames」(邦題:日本の男女共同参画担当大臣、選択的夫婦別姓に反対)という見出しで取り上げ、英ガーディアン紙も「Japan women's minister opposes plan to allow keeping of birth names」(直訳:日本の女性担当大臣が、出生名を保つ制度に反対)と報じています。

 「Japan is one of only a few industrialised countries where it is illegal for married couples to have different surnames.」とガーディアン紙が書いている通り、日本は選択的夫婦別姓を認めていない数少ない先進国の一つです。

選択的夫婦別姓は、別姓を強いるものではない(写真提供:ゲッティイメージズ)

 「選択的」夫婦別姓制度は、文字通り「選択できますよ!」というだけのものです。

 名前は自己アイデンティティーの一部であるとともに、社会的役割でもたらす意義が極めて大きい。だからこそ女性が働くのが当たり前になった今、「選択させてくれ!」と声が高まっているわけです。

 丸川大臣だって、結婚して大塚珠代になったあとの選挙で「丸川珠代」として出馬しているではないですか。その意義を考えれば、働く女性にとって「名前」が「キャリア」と直結してることが分かるはずです。

 「別に制度作らなくたって通称でいいじゃん!」という声もありますが、通称を使うことで生じる不利益は多種多様です。

 以前私がインタビューした女性は、会社では旧姓のまま仕事を続けていました。ところが、ある日“事件”がおきます。

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