「子どもが熱を出し、保育園から会社に電話があったのです。ところが、私は旧姓で仕事をしているので、誰も本名を知らず、電話があったことがすぐには伝わりませんでした。会社の中には結婚をしていることも、子どもがいることも知らない人もいます。
幸い子どもはただの風邪だったので、その日はことなきをえました。もし、事故や生命に危険を及ぼす状態だったらと思うと、ゾッとします。
そのことがあってから、私は自分が仕事を続けることが本当に正しいことなのか、分からなくなりました。自分のキャリアを考えると、やはり旧姓を使い続けることに意味があるんです。でも、それってわがままなのだろうか、とか。他人にも、子どもにも迷惑を掛ける母親ってどうなんだろう、とか。女性活躍、女性を輝かせるとか言われてますが、結局、女は子育てに専念することを求められているような気がしてなりません」
たかが名前、されど名前。件の女性が経験した通り、通称に置き換えられるものでは決してないのです。
もっとも、法律上は妻の姓を選択することも可能です。しかし、現実には96%の夫婦が夫の姓を名乗っています。国連女性差別撤廃委員会や国連人権理事会が再三、改善を勧告しているのが、まさにこの問題です。
「別姓を認めない日本の法律は、女性差別的な制度である」と国連は指摘しています。国連が定めた「国際女性デー(3月8日)」に公表された「女性の働きやすさランキング」で、日本は29カ国中28位、下から2番目です。
また、各国の男女平等の度合いを示す「ジェンダー・ギャップ指数」で、日本は2016年に111位、17年に114位で、19年は121位にまで転落して、中国や韓国などのアジア主要国と比べても低くなっています。
繰り返しますが、あくまでも夫婦別姓は「選択」です。それぞれの夫婦が自分たちの責任で選択すればいいだけのことです。
にもかかわらず、「戸籍上の『夫婦親子別氏』(ファミリー・ネームの喪失)を認めることによって、家族単位の社会制度の崩壊を招く可能性がある」だの、「これまで民法が守ってきた『子の氏の安定性』が損なわれる可能性がある」だのと、反対する意義はどこにあるのでしょうか? 上記2点は、丸川大臣らが署名した「選択的夫婦別姓の反対を求める文書」に記されている文言です。
ましてや「安易な選択的夫婦別姓は犯罪が増えるのではないか」という意味不明の意見まで出ているのですから、全くもって理解できません。
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