面接は企業が候補者を評価する場ではなく、企業と候補者双方にとっての相互理解の場である。
多くの面接において、会社や仕事内容の説明、候補者の過去の経験や人物像の深掘り、候補者から企業への質問は行われているだろう。それに加え、候補者に「入社後に期待する成果」も面接時に伝えていただきたい。
何を期待されていて、どのように働くかという入社後のイメージが描けなければ、候補者は入社という判断をしづらい。また先述の通り、自分への期待──「なぜ採用されたのか」「どこを評価されたのか」が分からないというケースもよく見られ、早期離職につながりかねない。
一歩踏み込んだ面接を行い、面接の質が向上すれば、採用できる人材が変わる。そして採用が得意になれば、より企業成長に貢献してくれる人材獲得ができるようになり、強い組織に変わっていく。
面接は時間が限られているため、面接する側も準備が必要だ。候補者を見極めるためにどのような質問をすべきか、会社として伝えなければならないことは何か、などを考えておくと、時間を有意義に使うことができる。その場の流れで話をしていると大事なことを聞きもらしたり、伝え忘れてしまったりすることがあるため、リスト化しておくとさらに役に立つ。
採用の精度を高めるためには、「何があれば合格で、何がなければ不合格なのか」という明確な基準を作っておくことが有効だ。採用基準があれば、判断に迷ったり、主観で判断ミスしたりすることがなくなる。組織全体で採用基準の標準化ができると、面接官によらずに一貫した水準で候補者を評価することができるようになり、採用の質を維持できるようになる。
採用は水物といわれており、長い間、面接官の感覚で判断されることが続いてきた。しかし昨今、大手テクノロジー企業がデータを駆使して最適な採用フローを考案し、根拠のある採用活動が進み始めている。
例えば、最適な面接の回数をロジックにより判断している企業もある。どの職種・役職の面接官が何回目の面接を担当し、何を聞くか詳細な質問事項も決めて、選考の内容を統一している。また、現場の担当者はスキルがある候補者を採用しがちな傾向があるため、全く関係ない部署の社員が面接を行い、客観的に人格を判断するという取り組みを戦略的に取り入れている企業もある。
企業は、候補者の採用後の姿まで描いておかなければならない。どんなに優秀な人材でも受け入れるチームとの相性があるため、入社後の配慮までしておくことが必要だ。入社後は、部門やチームメンバーなどの受け入れ側が、入社者の任務・達成すべき仕事を理解しておくことが大切になる。
入社者と受け入れ側の目線がそろっていると、同じ目標に向かって進むことができるため、引き継ぎの効率が良く、入社後の成長スピ―ドも早くなる。どれだけ優秀でスキルがある人材を採用できたとしても、受け入れ体制が整っていないと、企業はその能力を十分に生かすことができない。
ミスマッチによる早期離職は、チームメンバーなど周囲への影響も大きい。業務の引き継ぎのために費やした時間・労力だけでなく、メンタルにも影響を及ぼすことがある。人事・採用担当者には言うまでもないが、多大なコストも発生する。目に見えるのは人材紹介会社や転職サイトに支払ったコストのみだが、面接の対応や受入れの手続き、導入研修にかけた時間や労力、採用に関わった人たちが本来の業務をしていた場合に作れていたであろう利益などを考えると、損失は計り知れない。
採用は非常に難しい。しかし、企業の発展のためには欠かせないものである。それぞれの採用ステップでできることを見直し、ミスマッチなく入社後に活躍する人材を獲得するために、突き進んでいただきたい。
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