ここからは完全に想像の世界になるが、この工場に「サイバー攻撃」が仕掛けられ、制御装置などがマルウェア(不正なプログラム)に感染し、攻撃者による遠隔操作で生産ラインを過電流にされてしまうケースは、まったく考えられない話ではない。少なくとも、起きうるシナリオとして想定すべきである。
事実、過去にはこうした工場の中央制御装置などがサイバー攻撃で不正に操作された事件が起きている。有名なのが、10年に発覚したオリンピック・ゲームス作戦だ。この作戦には「スタックスネット」と呼ばれるマルウェアが使われ、核開発を進めていたイランのナタンズ核燃料施設を破壊した。
スタックネットが施設内部でウラン濃縮作業を行う遠心分離機の動作を管理する独シーメンス社製の中央制御装置に感染。遠心分離機の管理をしていた職員らに一切感づかれることなく、多くの機械を不正に操作し、回転数に異常を起こして、爆破させたことが判明している。
さらにウクライナでも15年の年末に、西部にある電力会社の電力制御管理のシステムが何者かにサーバー攻撃によって乗っ取られた。そして次々と電力供給がストップされ、ウクライナでは22万人以上が真冬のクリスマスを前にして電力が使えなくなる事態に陥った。
それ以外にも、こうしたインフラを狙った攻撃は頻繁に報告されている。
こうしたシナリオは、ずいぶん前から、もはや映画のなかのフィクションではなくなっている。とはいえ、こんなシナリオは起きないに越したことがないのだが、現実にはそんな顛末も想定しなければいけない時代になっているのである。
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