ルネサス火災の真相は? セキュリティ関係者が疑っている「こと」世界を読み解くニュース・サロン(5/5 ページ)

» 2021年03月25日 08時00分 公開
[山田敏弘ITmedia]
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日本の技術は狙われている

 とにかく、日本の技術は狙われている。大企業だけでなく、それら企業と取引をしながら技術を提供している小さな工場なども例外ではない。いわゆるサプライチェーンのなかの比較的セキュリティが緩いと見られる企業や工場などが狙われるのである。特に中小企業などでは、予算がなかったり、セキュリティのしっかりした新たなシステムに乗り換えたりするのに抵抗があったりする。使い慣れた機器を手放したくないし、新しい機器を導入すると互換性などの問題もでてくるので、そんなことに時間と金を使いたくないという声も聞こえてきそうだ。

 それはごもっともだが、サイバー攻撃などを受けたときの損害のほうが大きくなる可能性があることを知っておくべきだろう。もちろん会社の維持や追加投資などが必要で、現実的に見て、経済安全保障の面で警戒されている中国といった国外からの投資など、好条件の申し出に応じざるを得ない状況も分かる。

 だが経済安全保障が声高に叫ばれる時代になった。長い目で見ると企業にも国にも打撃になる可能性がある。やはり慎重になる必要があるだろう。

筆者プロフィール:

山田敏弘

 元MITフェロー、ジャーナリスト、ノンフィクション作家。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフルブライト・フェローを経てフリーに。

 国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)、『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)、『CIAスパイ養成官 キヨ・ヤマダの対日工作』(新潮社)、『サイバー戦争の今』(KKベストセラーズ)、『世界のスパイから喰いモノにされる日本 MI6、CIAの厳秘インテリジェンス』(講談社+α新書)がある。テレビ・ラジオにも出演し、講演や大学での講義なども行っている。


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