日本進出7年で売上200億突破のアンカー・ジャパン、“成功の裏側”と多ブランド戦略の意図 : 家電メーカー進化論 (4/9 ページ)
――Ankerグループは時代に先駆けてDtoC(Direct to Consumer:小売店などを通さず、生産者が消費者と直接取引する販売方法)を軸にしたことが、トップブランドへ躍り出た成功要因だとよくいわれています
確かによくいわれますが、そもそもDtoCというのはこの数年の言葉です。さらにアパレル業界では、1980年代にアパレルブランドのGAPがSPA(Speciality store retailer of Private label Apparel:製造から小売までを自社で行うビジネスモデルのこと)を行っており、ある意味これもDtoCですし、広い視点で見ると珍しくない業態です。
ですので私としては、DtoCという形態自体の先駆けだとは思っていません。我々が創業した時点で、すでにAmazon.co.jpや楽天市場などのECプラットフォームは充実していたので、我々は、それを利用して製品を販売することにまずは全リソースを投入した、という流れでした。
もちろんECを利用したのは、参入が簡単という以外にも大きな理由があります。DtoCというと一般的に「メーカーが直接製品を売るから、中間に人をはさまず、結果としてコストを抑えられる」というメリットが注目されがちです。しかし我々にとって、コストよりも大切だったのは顧客との距離の近さ、つまりECのほうが製品やブランドの魅力を伝えやすいという一点に尽きます。
小売店だと店員さんが「おススメの製品はこれです」とか「今売れているのはコレ」といった説明をしてくれます。ですが店員さんも、全製品の細かな魅力まで網羅して把握しているわけではありません。あるいは製品の説明ができても、どういうブランドなのか、という細かな説明までを店員さんに求めるのは難しいことだと思います。
しかしスタートアップにとっては、「ブランドのファンを増やす」のは非常に重要な課題です。その点ECなら、我々が伝えたいことを伝えたい形で伝えることができます。その意味でも、大きな魅力がありました。
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