消費者の購買意欲を上げるため、SNS活用は重要な手段の一つだ。
手作りドッグフード「ココグルメ」を提供するバイオフィリア(東京都品川区)は、SNSでのUGC(User Generated Content)戦略に注力している。UGCとは、ユーザーが自分の意志で投稿した口コミなどのコンテンツのこと。Web上に情報があふれているからこそ、実際の商品利用者の声を参考にして商品を購入する顧客は多い。そのため利用者の声を、戦略的に自社の発信に活用する動きが進んでいる。
UCGを活用したことで、ココグルメのSNS経由での月次売り上げは昨対比で400%増加した。大規模な広告予算を投下せずとも、Instagramを中心としたSNSマーケティングで大きな成果を出しているという。
しかし、口コミ投稿を依頼するだけではユーザーを巻き込めないことは、SNS担当者は承知の通りだろう。どのようにしてユーザーに気持ちよくコンテンツを投稿してもらうのか。また、UGCをどのように売り上げにつなげていくのか。UGC活用のカギについて、ココグルメを販売するバイオフィリアのCOO、矢作裕之氏に話を聞いた。
バイオフィリアは2017年、動物と人間が愛情を持って共存する「アニマルウェルフェア」実現のため、社長の岩橋洸太氏と矢作氏が共同で創業した。
製造・販売を行うココグルメは、栄養バランスに配慮した、獣医師監修の国産手作りドッグフードだ。愛犬を家族のように考える飼い主をターゲットに、手作りの食事を冷凍配送で届ける。その他、飼い主向けのアルバムアプリ「ぺっとる」を運営している。
従来のペットフードは、茶色い塊のドライフードと缶詰のようなウェットフードの2種類が主流だったが、「ペットの家族化」が進んだことで、手作りの食事を与えたい、より人間に近いご飯を与えたいというニーズが増加した。このニーズを察知し、手軽に人間の食事に近いごはんを与えられる商品としてココグルメの展開を始めた。
UGCに注目したきっかけは、アルバムアプリ「ぺっとる」内でのユーザーの熱量だった。ぺっとるはペットの写真を家族内で共有するクローズドなサービスだが、ユーザーは家族内で数百枚の写真を共有するのだという。「数人単位のコミュニティーでも熱量の高いものができていくことを実感しました」と矢作氏は振り返る。
矢作氏によると、コスメやファッションのような、発信力のあるインフルエンサーがその他の消費者に商品を拡散する市場と違い、ペット市場は家族やペット友達、散歩中に出会う人との間で小さい口コミが生まれる。そして、その口コミがコミュニティー内で広がり、商品の情報が共有されていく特徴があるという。
「数人単位のマイクロコミュニティー内で、どうやったら情報を手軽にシェアしてくれるか? この視点に気付き、1年半ほど前からSNSに注力するようになりました」
そこで同社はさまざまな施策を実施した。その中でも好評だった取り組みが、ココグルメの公式Instagramアカウントに登場するモデル犬の募集だ。「#ココグルメモデル」とタグを付けて愛犬の写真を投稿してもらい、その中から公式アカウントに掲載するモデル犬を選ぶというものだ。
すると、募集から1カ月間で100件以上の応募が殺到。投稿の製作が間に合わないほどの人気企画となった。「早くわが子を使ってください」とDMで催促されることもあるという。
また、既読スルーが一定数あると見込んだ上で、愛犬の写真撮影企画を10人のユーザーにDMしたところ、全員から返信が届き、逆に人数を絞らなければいけなくなったこともあった。
矢作氏は「どちらの企画も『愛犬との暮らしを楽しみたい』『自分の子を見せたい』という思いや熱量があると感じたので、こういった施策はもっとやっていきたいと思っています」と話す。
その一方で、失敗した企画もあった。
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