マーケティング・シンカ論

Instagramの口コミ活用で売り上げ400%増! “手作りドッグフード”の、熱量を生むSNS戦略とは?UGC戦略(2/2 ページ)

» 2021年04月09日 07時00分 公開
[らいらITmedia]
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 プレゼント企画やクーポン、オリジナルグッズの製作など、金銭的な見返りをもとにコンテンツを投稿してもらう企画は反応が悪かったという。

 もともと、ココグルメの購買層は年齢が高く、主に育児を終えてペットの食事にお金をかけられる層だったことから、矢作氏は「物をプレゼントする企画とは相性が悪かった」と分析している。

UGCへのリアクションが、次のUGCを生むエンジンになる

 若い女性向けのツールとして認識されやすいInstagramだが、リリースから10年以上がたち、アクティブユーザーの年齢層は上がってきている。その中でもペットアカウントで積極的にコメントに反応するようなユーザーは年齢層が高い。ココグルメアカウントはフォロワー数が4000人以上いるが、40代〜50代の女性が多いという。

 「若年層は一周回って飽きてしまった一方、最近Instagramを始めてペットアカウントを作る40代以上の女性が増えてきている実感があります。そういった方はまだまだデジタルな関係性に慣れてない場合が多いので、“身近なペット友達”のような距離感でコミュニケーションを取るよう心掛けています」

 ココグルメのInstagramアカウントを見ると、敬語を使いすぎず、絵文字を交えながらコメントしている。また、一つ一つのコメントを取りこぼさず丁寧に返信していることが分かる。それ以外にも、ココグルメでは投稿を促進するメルマガや、投稿を募集するコメントなどの経由で実際にコンテンツを投稿してもらえたときのリアクションにも重視しているという。

 「タグつきで投稿されれば必ず絡みに行きますし、タグつきのワンちゃんの写真があればリポストしたりコメントしたりします。これだけ丁寧に取り組むのは、投稿に対するこちらの反応が、次のUGCを生むためのエンジンになるからです」

 SNSは主に3人で運用しているが、専任のSNS担当者はいない。同社はもともと全社意識として、全員が顧客をサポートし、全員がカスタマーサクセスに取り組む体制を取っている。そのため、各自が持ち回りでコンテンツを用意したりフォロワーと交流したりしている。

 しかし、業務の一環とはいえ、本業の合間にSNSのコンテンツを考えたりコメントを返したりするのは社員にとって負担ではないのだろうか。特にココグルメの場合、熱量を持った飼い主が多く、質問用のアカウントを作ったときは1投稿あたり5件は質問が来て、返信が追い付かない状況になったという。それでも、「基本的にはどんな質問に対しても、共感できるポイントがあるのです」と矢作氏は話す。

 「当社のメンバーは全員ペットの飼い主の経験があり、元ドッグトレーナーや元動物看護師だったメンバーもいるので、誰しもが飼い主として話ができるのは強みだと思います。正直な話、サービス当初の想定より何倍もの声が届くので驚きましたが、だからこそきちんとお客さまの声を聞いていこうと考えるようになりました」

 フォロワーのコメントに対する返信やUGCに対するリアクションを日々コツコツと継続し、フォロワーを巻き込んだ企画を実施してきたことで、関連ハッシュタグの投稿数は昨対比で月間5倍に増加した。数日に1件程度だった投稿が、今では毎日2〜3件投稿されるようになり、結果としてSNS経由での月次売り上げは400%増えた。

SNSマーケティングで必要なのは熱量と質の掛け算

 UGCの活用によって目に見える成果を収めたココグルメだが、「フォロワー数も大事だけど、フォロワー数が全てではない」と矢作氏は言い切る。

 「UGCの活用において大事なのは、熱量と質の掛け算だと思っています。SNSを商品を宣伝する場ではなく、お客さまとのコミュニケーションを取っていく場だと考えれば、他のアカウントとの差別化になりますし、ひいては売り上げにもつながっていくと思います」

 ココグルメは「餌ではなく食事にしたい」をキーワードに、今後も商品の品質や健康へのこだわりを打ち出していく方針だという。

 「単に健康志向の高級品を展開するのではなく、飼い主としての根源的な『ペットとコミュニケーションを取っていきたい』というニーズを満たしていくサービスづくりをしていきたいと考えています」(矢作氏)

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